国税関係帳簿や国税関係書類など税金に関する書類について、電子データでの保存を認める「電子帳簿保存法」。2023年の法改正によって、電子取引の書類は電子データで保存することが義務化され、2024年には紙に印刷しての保存が原則禁止となります。では、この「電子取引」とは具体的に何を指すのでしょうか。今回の記事では、電子取引の対象書類や保存用件について一緒に勉強していきましょう。

電子帳簿保存法の保存区分

電子帳簿保存法では、保存するべき情報の特性に応じて3つの保存区分が設けられています。電子取引について詳しく解説する前に、まずはその区分について詳しく見ていきましょう。電子帳簿保存法の保存区分は、大きく以下の3種類に分けられています。

1. 電子帳簿等保存

電子的に作成した帳簿や書類をデータのまま保存することです。例えば、会計ソフトなどを使って自社で作成した帳簿や決算関係書類などを、電子データのまま保存することもこれに該当します。

2. スキャナ保存

取引先などから郵送で送られてきた紙の請求書や領収書などをスキャニングし、画像データとして保存することを意味します。

3. 電子取引データ保存

電子的にやりとりした領収書や請求書などをデータで保存することを意味します。

電子取引とは

電子帳簿保存法における「電子取引」とは、電磁的な方法によって行う取引のことを意味します。簡単に言えば、電子メールやEDI取引、クラウドサービス、インターネット通販による取引など、インターネットを介した電子データのやりとりのことです。領収書や請求書など、紙でやり取りする必要がある書類を電子データでやり取りした場合には、電子取引扱いとなりデータ保存が必要になります。

電子帳簿保存法における「電子取引」の対象書類

電子帳簿保存法における電子取引の対象となるのは、電子データでやり取りを行った取引書類です。具体的には、注文書や契約書、見積書、領収書などのほか、送り状なども含みます。わかりやすく言えば、PDFや画像データなどで取引書類を発行した場合や、先方からデータで取引書類を受領した場合は、全て電子取引に該当するということです。なお、契約書や領収書、請求書、納品書など、資金や物の流れに直結・連動する書類を「重要書類」、資金や物の流れに直結しない、⾒積書や注文書、検収書などを「一般書類」と分類します。
電子取引」の種類については、以下のように分けることができます。

インターネット取引

発注書や納品書、請求書などのPDFをWebサイト上からダウンロードしたものなどが該当します。

電子メール取引

電子メールによって発注書や納品書、請求書などを送受信することを指します。

EDI取引

発注書や納品書、請求書などをEDIシステムで電子化して取引することです。

クラウド取引

クラウドサービスを利用して発注書や納品書、請求書などをやり取りすることです。

そのほかの電子取引

DVDやUSBなどの記録媒体によって納品書や請求書などを受領した場合も電子取引に該当します。

電子取引の保存要件

電子帳簿保存法における電子取引には、大きく以下の2つの要件が定められています。

真実性の確保

保存した電子取引のデータは、改ざんを防ぎ訂正や削除の事実内容を確認できる状態にしておくことが定められています。具体的な方法としては、タイムスタンプの付与などによる以下のいずれかの措置が必要です。

  1. タイムスタンプが付与されたデータを受領する
  2. データの受領後に速やかにタイムスタンプを付与するとともに、保存の実行者または監視者に関する情報を確認できる環境を整える
  3. 訂正や削除を確認できるシステムもしくは、訂正や削除ができないシステムでデータの受領および保存を行う
  4. 訂正や削除の防止に関する事務処理規程を定め、それに沿った運用を行う

可視性の確保

保存したデータを明瞭な状態で閲覧・出力することができ、必要に応じて速やかに参照できる状態にしておくことについて、細かく以下の要件が定められています。

  1. 関連書類の備え付け:システム概要書やシステム基本設計書など、システムの概要を記載した関連書類を備え付けます。
  2. 見読性の確保:電子取引のデータを保存する場所に、電子計算機やプログラム、ディスプレイ、プリンタを設置し、これらの操作説明書も備え付けます。さらに、電磁的記録をディスプレイの画面および書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておきます。つまり、データをすぐにパソコンやタブレットなどで閲覧できる状態にしておく、ということを意味します。
  3. 検索機能の確保:保存したデータは、「取引年月日・取引先・取引金額の3項目」、「取引年月日または取引金額の範囲指定」、「複数の記録項目の組み合わせ」のいずれかの条件で検索できるようにしておきます。

令和5年度税制改正大綱の電子取引データ保存に関する主な変更点

ここまでは、電子帳簿保存法における電子取引の対象書類や保存要件について解説しました。最後に、2024年1月に施行が予定されている「令和5年度税制改正大綱」による変更点についてもおさらいしておきましょう。2024年1月以降の電子帳簿保存法の電子取引データ保存に関する主な変更点は以下の通りです。変更点については、令和6年1月1日以後にやり取りする電子取引データについて適用されます。

検索要件が不要になる対象者の変更

税務調査などの際に電子取引データのダウンロードの求めに応じることができる場合の「検索機能の全てを不要とする措置」の対象者が、以下のように変更されました。

  1. 基準期間(2課税年度前)の売上高が「1,000 万円以下」の保存義務者から「5,000 万円以下」の保存義務者に変更。
  2. 電子取引データをプリントアウトした書面を、取引年月日やその他の日付、取引先ごとに整理された状態で提示・提出することができるようにしている保存義務者も新たな対象に。

宥恕措置は令和5年12月31日の適用期限をもって廃止

ただし、令和5年12月31日までにやり取りした電子取引データを「宥恕措置」を適用して保存している方は、令和6年1月1日以降も保存期間が満了となるまで、そのプリントアウトした書面を保存し続け、税務調査などの際に提示・提出できるようにしていれば問題ありません。

猶予措置が新たに整備

新たに、以下の2つの要件をいずれも満たしている場合、改ざん防止や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことができるようになります。

  1. 保存時に満たすべき要件に従って、電子取引データを保存することができなかったことについて、所轄税務署長が相当の理由があると認める場合(事前申請などは不要)
  2. 税務調査などの際に、電子取引データのダウンロードの求めや書面の提示・提出の求めに応じられるようにしている場合。

電子帳簿保存法における「電子取引」については上記を参考にしてみてください。また、電子帳簿保存法の対応については、Fleekdriveの「電子帳簿保存法オプション」のご利用も選択肢のひとつに加えてみてください。