企業がDXを進めるにあたって、レガシーなシステムからの脱却はもちろん、レガシーな社内文化の変革も重要です。さまざまな側面から企業や社会を「トランスフォーメーション(変容)」させることにより、経済産業省が提言した「2025年の崖」の危機を克服することが可能になります。この記事では、ファイル管理に焦点を当てて、レガシーな企業文化におけるファイル管理の問題と解決策について考察します。

「2025年の崖」対策ではレガシーな企業文化にも注意

「2025年の崖」は、経済産業省がDX推進の遅れから生じる経済的な損失に警鐘を鳴らしたキーワードです。長い間使い続けて老朽化したレガシーシステムの問題がクローズアップされています。また、レガシーシステムの保守に携わる人員の退職、最新技術に対応する能力を備えたIT人材の不足も問題として挙げられています。システムに限らず、レガシーな社内文化の問題もあります。システムを置き換えることができたとしても、なかなか社内文化を変えることは難しいものです。大企業では、これまでのやり方を刷新できない場合が多く、変化やチャレンジを拒む風潮は大企業病と呼ばれます。
企業の革新を阻むレガシーな企業文化について、3つをピックアップします。

退職した社員の引継ぎが困難な「属人性の問題」

システムの保守を特定の担当者に任せたままにしておき、その担当者が退職すると、メンテナンスが困難になる場合があります。つまり仕様がブラックボックス化して、引継ぎができない状態です。レガシーシステムは古いプログラム言語で構築されている場合も多いことから、その言語に対する理解がないとシステム障害があっても対応できません。
引継ぎの書類やマニュアルなどのドキュメントがない、残っていたとしても分かりにくい場合も業務に支障が生じます。こうした属人性による問題は、情報システム部門に限らず、さまざまな部門にありがちな問題といえます。

文書管理を煩雑にする「Excel文化」

Excelは基本的に表計算のアプリケーションですが、文書作成ツールとして使う社員も少なくありません。たとえば議事録を作成するとき、ある社員はWord、別の社員はExcelのように、自分の使いやすいアプリケーションで文書化した場合、さまざまなファイルが混在して情報共有が煩雑になります。
また、ストレージ上に保存したExcel文書を誤って上書きしたり、削除したりする問題もあります。営業の予実管理のような集計ファイルが消失して、バックアップを取っていなかった場合、業務がストップするトラブルに発展しかねません。メールにExcelファイルを添付して共有する方法は一般的ではありますが、タイムリーな確認ができないことから、業務スピードを低下させます。

全社的な情報共有を阻む「サイロ化」

部門ごとに別々のシステムを使い、それぞれのシステムが孤立して連携できない状態をサイロ化といいます。業務に合わせた独自システムも必要かもしれませんが、個別最適化を優先すると情報が連携できません。情報共有の際には、わざわざデータを加工しなければならない煩雑さが生じます。部門別に似通ったシステムを契約していると、コストのムダも生じます。
また、従業員個人が独自のソフトウェアを許可なく使っていることもあります。この場合は、サーバー攻撃によるウイルスの感染、ファイルの不正な持ち出しによる情報漏洩など、セキュリティのリスクが高まります。会社で管理できないシャドーITにも注意が必要です。

2025年の崖を乗り越えるためのファイル管理の基本

レガシーな社内文化の問題を解決するには、社員に対するルールや教育の徹底が必要です。また、システムでコントロールできる部分はシステムの機能を使うことも有効になります。文書管理システムのワークフローに合わせて標準化する方法も、有効な対策方法のひとつといえるでしょう。既に実施されている場合が多いかもしれませんが、総合的な観点から、あらためてファイル管理の基本を整理します。

システム全体を見据えたファイル管理の方針の決定

まず、ファイル管理の方針を決定します。あまり厳格に設定し過ぎると運用が浸透しなかったり、かえって非効率になったり、逆効果であることに注意が必要です。自由度を残しつつ、最低限の守るべきルールを決定します。たとえば、ファイルのデータのフォーマットを整理し、共有すべき文書と機密性の高い文書の保存場所を分離します。ファイルの閲覧や印刷などのアクセス権限の設定も重要です。

フォルダの階層、ファイル名のルールを明確にする

ファイルを共有する場合には、フォルダの階層は3階層までにしておくとよいでしょう。テーマが異なっていてもファイルの階層構造を統一すると整理しやすくなります。ちなみにISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)関連の文書は定められた階層によって、文書番号や様式番号を付けて管理します。
ファイル名は「日付(年月日)+ファイル名」などで統一するのも選択肢のひとつです。また、文書内を検索できるようにインデックス化をしたり、タグを付加したり、目的の文書を探しやすいような検索の工夫がポイントです。

一時保管、ダウンロードファイルの保存など場所を決める

分類が難しい文書は、一時保管の場所を決めておきます。誤った場所に保存して、どこに保存したか探せなくなる事態を避けるためです。ただし、一時保管場所に保存したファイルは、一定の期間でチェックして、分類や削除をすることが大切です。保存場所を放置したままにしておくと、整理ができない状態になります。ダウンロードファイルの場所も決めておくとよいでしょう。参考資料となる資料の場所を作成した文書の場所と分けることで、必要なときに探しやすくなります。

利用状況を管理し、不正利用や情報漏洩を防ぐ

電子化されたファイルをストレージに保存するときには、アクセス権限を設定します。権限によってアクセス自体ができないように制限します。プリントアウトを制限することも大切です。利用状況の記録はログを残しておくと、不正な利用や機密情報の持ち出しを防ぐことができます。クラウドストレージを利用している場合、退職者のアカウントはそのまま放置せずに、不要なアカウントを削除してアクセスできないようにすることも重要です。

従業員に対するファイル管理のトレーニングと持続的な運用

社内のシステムを大幅に変更する場合には、導入時に使い方とともにファイル管理の方針や注意点の教育を行います。特に、個人情報など機密情報の扱いに注意を促すことが重要です。新入社員の研修時にファイルの階層、ファイル名の付け方を徹底しておくことで、社内のルールを浸透させることができます。ファイル管理のルールは、定期的に運用状況をチェックし、改善を行います。運用を持続することにより、社内文化として定着させていきます。

ファイル管理にはクラウドストレージのFleekdrive

2025年の崖を乗り越えるためには、システムのリプレイスやクラウドへの移行はもちろん、レガシーな社内文化の刷新が求められます。ファイル管理に関しては、社内のファイルサーバを使うことも可能ですが、クラウドストレージによって管理負荷の大幅な削減が可能です。業務の課題点を把握した上で機能をフルに活用することで、生産性向上を実現します。Fleekdriveには、きめこまかなアクセス権限の設定、社外のパートナーとファイルを安全に共有するための機能、コラボレーションを行うためにファイルの内容をチャットできる機能などを備えています。ファイル管理をテーマとしたセミナーも行っていますので、ぜひご検討ください。

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