長時間労働が社会問題になり、残業時間が長い会社は世間から白い目で見られるようになりました。社員の健康や満足度、人手不足の状況に鑑みても生産性を向上して残業を減らすことが急務です。本記事では残業を減らすためにできる施策について、組織・会社全体でできること、チームでできること、個人でできることに分けて紹介します。

組織・会社全体でできる残業対策

残業が恒常化している場合、個人やチームの問題というよりも組織・会社全体の問題と考えられます。残業を減らすために組織・会社という単位で取り組むべき施策は数多くあります。

まず考えなければならないのが社員の意識改革です。残業を良いこと、がんばっている証拠と考えて残業の多い社員を褒めたり、逆に定時に帰る社員を冷たい目で見たりする風土は変えなければなりません。残業が発生しているということは管理職や役員によるマネジメント能力の低さ、個々人のスケジュール管理の甘さの証拠だと考え、残業は情けない・恥ずかしいことだという認識に変えていきましょう。

残業のとらえ方を変えるためには、残業が少なくて成果を出しているチームや個人を表彰する制度を導入する、役員や管理職が率先して定時で帰る、頻繁に「残業は恥ずかしい」というメッセージを全社的に発信する、といった施策が考えられます。
また、これまで残業が横行していたのであればむしろ、仕事が早く終われば定時前に帰るという制度を立ち上げ、役員や管理職が率先して帰る姿を見せるのも良いかもしれません。仕事を効率的にすると良いことがあるというメッセージになります。
しかし、気の持ちようだけで残業を減らすことができれば苦労しません。業務量を削減したり、業務を効率化したりすることで社員が本質的な業務に集中できる環境づくりも必要です。

業務に集中できる環境を作るためには?

業務環境改革の1つに業務自動化の推進があります。労働環境の歴史的な変化を見ると、工場における手作業での生産がロボットに代替されてきました。同じように、事務作業をIT技術に自動化してもらうことを考えます。このホワイトカラー業務の自動化は「RPA(Robotic Process Automation)」と呼ばれ、導入による生産性の向上が期待されています。毎回同じように行う単純作業、事務的なルーチンワークの一部をITによって自動化することで、作業時間やミスを削減できます。

チャットツールの導入も業務量の削減に寄与します。業務中にかかってくる電話はその場で対応する必要があり、それまで行っていた作業を中断せざるを得ません。電話を取る前の調子を取り戻すのに時間がかかり、電話がなかった場合と比べて業務が非効率になります。また、メールに関しては作業を中断されない点は良いですが、文面の体裁を整えるといった業務の本質ではない部分に時間がかかってしまいます。その点チャットツールならば電話のように作業を強制的に中断されることなく、メールのようにかしこまった文章を考える必要もありません。

また、作業に集中したいときに電話や同僚から離れて一人になれる環境を整えることも効果的です。集中して作成すれば1時間でできる資料が、電話や同僚による断続的な作業中断のせいで集中できず、だらだら3時間かかってしまう、といったこともあります。集中作業用の部屋や作業スペースを確保することで社員の作業効率が上がります。
加えて、社員に時間を有効活用するためのスキルを身につけてもらうことも重要です。社員自身、残業を減らしたいと思いつつ具体的にどうすれば良いのか分からずもがいている、という可能性もあります。研修等によって適切なタイムマネジメント手法を社員一人ひとりに身に付けてもらいましょう。

チームでできる残業対策

チーム単位でできる残業対策もあります。1つは業務の適切なマネジメントです。一部の人に業務が集中してしまったり、そもそも対応しきれない業務量になっていたりしては、残業は減りません。個々の業務を可視化・細分化して小さいタスクに分け、チームメンバーの能力と勘案してタスクの割り振りや業務計画を見直す必要があります。
また、チーム内での話しやすい環境づくりも重要です。特にチームリーダーや上司に余裕が無いとチームメンバーや部下が話しかけづらく、話しかけるための準備や様子伺いに無駄な時間と精神的労力を浪費してしまいます。いつでもすぐに話しかけられるような雰囲気を意識しましょう。

個人でできる残業対策

個人単位でも残業を減らすためにできることはあります。問題意識を持って効率化できる部分を探しながら日々の業務に取り組むこと、そしてタイムマネジメント手法を身につけることです。比較的早く帰っている同僚に作業効率化のコツを聞いてみるというのも良いでしょう。

【具体的な取り組み事例】港湾運送業などを営むA社a支店の場合

実際に残業を減らすための取り組みを行っている企業の事例を見てみましょう。例えば、港湾運送業などを営むA社a支店では、始業前・終業前のミーティング時に管理職が残業を予定している社員の業務内容と退社予定時間を確認しています。業務内容が急ぎでなければ翌日に回したり、他の社員に仕事を割り振ったり、管理職がしっかりと残業状況を把握し、削減できるようマネジメントしています。残業実績は管理部門に報告され、残業実態が管理されています。
また、自社コストの増加が顧客の支払う費用にも反映するという考えから、顧客を巻き込んで業務効率化を図っています。加えて、特定の社員にしかできない業務が生まれて作業が集中しないように多能工化を進めています。これらの取り組みによって、この支店では無駄な残業を削減しつつ顧客の要望にも応えています。

こちらの支店のように、まずは残業の実態がどうなっているのかをしっかりと把握し、上に立つ者が適切にマネジメントすることが重要です。そして、顧客を巻き込んだ業務改善も見習うべきポイントです。例えば、自社だけでなく顧客にもチャットツールの導入を促すということが考えられます。自社・顧客ともに連絡コストが下がり、業務効率を上げながら密な連絡が可能になります。

根気強く残業対策を行うことが社員・会社のためになる

残業削減は一朝一夕に終わる簡単な道ではありません。会社全体での意識改革や環境づくり、チームや個人における努力や工夫が必要です。しかし、そうした取り組みが実を結んで残業を減らすことができたときのメリットも大きいです。生産性向上に繋がりますし、社員一人ひとりが公私共に充実した生活を営むことで業務にも良い影響がもたらされます。また、残業が無いということは社員採用の上でもアピールポイントになります。自社の状況と照らし合わせて、効果のありそうな施策を検討・実施してみましょう。

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