近年、ダイバーシティ経営の考え方や働き方改革のムードが高まるとともに、テレワークに対する注目が集まっています。テレワークとは、ICT(情報通信技術)を活用して行う、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を指します。政府もテレワークの推進を打ち出しており、2017年からは普及運動のひとつとして「テレワーク・デイ」をスタートさせました。これは、テレワークを一斉に実施することで効果測定を行いつつ、多様な働き方を推奨するプロジェクトです。2018年の「テレワーク・デイズ」は、7月23日(月)~7月27日(金)に実施されることが決まっています。

こうしたテレワーク推進の動きがある一方、「導入コストがかかる」「労務管理やセキュリティの面で不安がある」「生産性が低下する」などのデメリットから導入をためらう企業も多いようです。ではいったい、テレワーク導入には、どのような障壁があるのでしょうか。テレワークを導入する際に考えなければならない、システムや技術面での課題や解決手法について解説します。

テレワークの現状と普及状況

務省「通信利用動向調査」(2016年)によると、2016年9月末時点でテレワークを導入している企業は全体の13.3%となっており、近年は上昇傾向です。
従業員の規模が大きい企業であればあるほど、テレワークに対する取組みが進んでいる傾向があります。総務省「ICT利活用と社会的課題解決に関する調査研究」(2017年)によると、テレワークを導入済みの企業は、従業員数100人以下では数%程度である一方、301人以上の企業では20.4%となっています。また、近年は地方自治体でも広がりつつあり、時事通信の調査によると2018年1月現在で35の都道府県が導入していることが明らかになっています。

システム・技術面におけるテレワーク導入の課題

テレワークを実施することによる効果は、少しずつ蓄積されつつあります。しかし、普及状況を見てもわかるとおり、現状はまだ、導入や利用が十分に進んでいるとはいえません。
ここでは、システム・技術面にフォーカスをあて、テレワーク導入の課題とリスク、そして解決手法について、「ツール・環境」と「セキュリティ」の2つの観点から見ていきましょう。

ツール・環境

テレワークを新たに導入することにより、育児や介護などによって休職や退職を余儀なくされていた社員を継続して雇用することができます。また、通勤時間が削減されることも大きなメリットです。その一方で従業員たちは、同僚や上司と気軽に接する環境を失うことになります。
テレワーク導入によって労働生産性を高めるためには、スムーズなコミュニケーションを図る環境づくりが必要不可欠です。テレワークでも、職場同様のコミュニケーション環境を作る施策には、次のようなものが挙げられます。

  • ウェブ会議やテレビ会議のシステムの導入
  • サテライトオフィス(勤務先から離れた場所にあるオフィス)の活用
  • バーチャルオフィス(ウェブ上の仮想空間に作られたオフィス)システムの導入

テレワークは、自分のペースで働くことができる一方、孤独感を感じやすいワークスタイルでもあります。テレワーク環境を充実させたとしても、企業側は定期的に顔を合わせる機会を設定する必要があるでしょう。

セキュリティ

テレワーク実施に伴って発生する不安要素のひとつに、情報漏洩のリスクがあります。顧客やユーザー、取引先の大切な情報を預かる企業にとって、セキュリティ対策は極めて重要です。
情報セキュリティ対策には、次のようなものがあります。

  • 仮想プライベート・ネットワーク(VPN)を利用する
  • 仮想デスクトップ(VDI)を利用する
  • セキュリティを考慮した企業向けのクラウドサービスを利用する
  • 総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」を活用する

たとえ高度な情報セキュリティ対策を実施したとしても、テレワーク実施者のミスによって情報が漏洩してしまっては意味がありません。セキュリティに関する研修を実施するなど、企業側、実施者ともに理解を高める努力が必要です。

その他のテレワーク導入の課題

環境面やセキュリティ以外のテレワーク導入課題には、次のようなものがあります。

  • 導入による効果測定はどのようにすればいいのか?
  • 適正な労務管理、人事評価を行うことができるのか?
  • 対象となる業務が限定されるのではないか?
  • 導入・運用コストがかさむのではないか?

いずれにせよ、企業と従業員双方の懸念や疑問点を取り除きつつ、段階的に導入することが望ましいでしょう。

テレワーク導入には丁寧なプロセスが必要

テレワークは、時間や場所にとらわれない新しい働き方であり、多くのメリットをもたらす可能性があります。しかし、導入や運用方法を間違えると、労働意欲の低下や情報漏洩など、さまざまなトラブルを発生させてしまう要因ともなりえます。
テレワークによって得られるメリットとともに、課題や方策、デメリットも十分に理解した上で、テレワークの導入を検討してみてはいかがでしょうか。