年々、クラウドサービスを利用する企業が増えてきました。中でもクラウドストレージは、便利さというメリットを享受できる一方で、セキュリティの課題も持ち合わせています。 したがって「クラウドストレージは本当に安全なのか?」「データ漏洩のリスクはどのように防ぐことができるのか?」と、お悩みのご担当者もいらっしゃるのではないでしょうか。 記事後半ではデータの機密性、およびクラウドストレージに暗号化が欠かせない3つの理由「情報漏洩対策」「サイバー攻撃・内部不正アクセスの対策」「データ流出後のリスク対策」についても解説します。

情報セキュリティの3要素「機密性」「完全性」「可用性」

情報セキュリティを強化することは、今や企業において必須の要件となっています。その基本をなすのが「機密性、完全性、可用性」の3要素です。

  • 機密性:情報の漏えいや盗用を防ぐこと
  • 完全性:情報の改ざんや破壊を防ぐこと
  • 可用性:いつでも必要なときに情報にアクセスできること

この3要素を確保することで、信頼性と安全性の高い情報システムを構築できます。デジタル化が進む今、これらの要素を理解し情報を適切に保護することが企業に求められています。

機密性

情報セキュリティの機密性とは、情報漏洩のリスクを軽減するための対策です。重要な情報は、許可された一部のユーザーのみに限定すべきでしょう。たとえば、重要データを取り扱う部屋に入室制限をかける方法があります。従業員へはIDカードを所持させID管理を行います。パスワードを入力しなければ、社内システムを利用できないようにすることも可能です。コストをかければ、生体認証で管理する方法もあります。

完全性

情報セキュリティにおける完全性は、情報の改ざんや過不足のない正確な情報が保たれている状態を意味します。完全性が失われてしまうと、データの信頼性や正確性が損なわれてしまい、そのデータの利用価値が失われます。仮に、企業のWebサイトに改ざんが発生した際、その企業は信頼を失うことにもつながってしまいます。完全性を保持するためには、「データにデジタル署名をつける」「アクセス履歴・変更履歴を残す」などの方法があります。完全性が損なわれると、その企業だけでなく取引先にも大きな影響と混乱を招く可能性があります。

可用性

情報セキュリティの可用性とは、必要な時に情報にアクセスできることを確保することです。システム停止を最小限に抑えることでビジネスの継続性を支えます。可用性が高ければ、仮にシステム停止が起きてしまうような障害時でも迅速に復旧しサーバーへのアクセスが可能です。Webサービスを提供している企業においては、顧客満足の向上と企業の信頼性の向上に寄与するでしょう。これらの3つは「情報セキュリティの3要件」と呼ばれ、すべてを備えたシステムは高セキュリティかつ信頼性が高く、企業としてのリスクも低減されます。また、3要件を満たすことで「ISO27001(ISMS)」を取得することが可能となります。

クラウドストレージの主な2つの暗号化

クラウドストレージにおける暗号化は、主に「通信の暗号化」と「ファイル保存の暗号化」の2つに分けられます。以下では、これら2つの暗号化手法について解説します。

通信の暗号化

通信の暗号化は、インターネット上のデータ転送時に情報を保護する技術です。SSLやTLSを用いて実装され、データの盗難や改ざんを防ぎます。データはユーザーのデバイスからクラウドサービスへ、またはその逆の方向へと転送されます。通信の暗号化を利用することで、データが転送中に第三者によって盗まれたり、改ざんされたりするリスクを減らすことができます。

ファイル保存の暗号化

ファイルの暗号化はクラウド上のデータを保護する技術です。特定の暗号化キーが必要であり、不正なアクセスを受けても第三者による内容の閲覧を防ぐことができます。パスワードを付与してzipファイルを転送する方法と異なり、ストレージ自体を暗号化するため機密性が高められます。

クラウドのセキュリティに暗号化が欠かせない理由

クラウドサービスは、企業にとって業務の効率化のために大きな役割を果たしています。しかし、同時にさまざまなセキュリティ上の問題も浮上しています。ここでは、クラウドセキュリティになぜ暗号化が重要であるのかについて解説します。

情報漏洩対策

情報漏洩は企業にとって非常に大きなリスクです。データを第三者の目から保護し、情報漏洩のリスクを軽減する暗号化技術が重要です。クラウド事業者のセキュリティ対策は年々向上しています。しかし、機密情報を外部機関のセキュリティに預けてしまうのは危険といえます。クラウドストレージからの情報漏洩を防ぐためには保存データの暗号化が必要です。クラウドサービスに標準で実装されている暗号化技術はもちろん、利用者側で鍵管理できる仕組みを加えることで機密性の高いストレージ環境を整えられます。

サイバー攻撃と内部不正アクセスの対策

セキュアなクラウドストレージを活用することで、外部からのサイバー攻撃や内部からの不正などのリスクを軽減できます。外部からの不正アクセスは、何らかの方法でIDやパスワードを第三者が取得し、社内システムへログインし情報を抜き取られてしまいます。内部の不正は、正規のIDなどの権限を持つユーザーによって行われるため、防ぐことが難しい行為です。クラウドストレージで保管されるデータは、ファイル自体が暗号化されるため、これらのリスクからデータを保護することに役立ちます。暗号化された状態で情報が保存・転送されるため、第三者に情報が閲覧されるリスクを軽減できます。 また、データを利用したログを残す機能によって、「誰が、いつ、何のデバイスから」アクセスしたかの履歴を残すことができます。生体認証やID管理を徹底することで内部不正を抑止でき、もし発生した場合は不正利用者を特定できます。

データ流出後のリスク対策

企業にとってデータ管理は重要なファクターです。大企業になればなるほど管理するデータ量だけでなく、管理者の人数も多くなります。データを事前に暗号化していれば、内容を第三者に解読されることを避けられます。さらに、万一データが持ち出された場合の「ファイルの追跡」や「遠隔操作によるデータの削除」「ファイルの閲覧権限の変更」ができるサービスも登場しています。このように、クラウドストレージサービスの活用によって可能なデータの暗号化や、流出後のリスクを大幅に低減させることが可能です。 また、ファイル追跡などのサードパーティが提供するサービスもあるため、クラウドストレージサービスと併用することで機密性の高いデータ管理を行えるようになります。

まとめ

保存する重要データの機密性を高めるため、クラウドストレージを利用する企業が増えています。データをやりとりする通信自体を暗号化する他に、データやファイル自体を暗号化することで機密性を向上させます。外部からの不正アクセスや、内部不正によるデータ流出のリスクを軽減するためにも暗号化は必須の施策といえます。この記事が、機密性の高いクラウドストレージサービス選定の参考となれば幸いです。