特性要因図はもともと製造業における品質管理のための手法として開発され、日本の工業国としての発展を陰で支えてきたツールです。特定の結果と要因の因果関係を魚の骨のような図に書き表したもので、物事の因果関係を視覚的に整理できます。隠れた問題点の洗い出しに使えることから、品質管理の分野に限らずビジネス一般の問題解決に使えます。ここではビジネスパーソンなら知っておいて損はない、特性要因図の基礎知識を紹介します。

特性要因図の概要と歴史

特性要因図とは、「ある特定の結果が、どのような要因によってもたらされたのか」という因果関係を図式として視覚化したものです。見た目が魚の骨に似ていることから、フィッシュボーン図やフィッシュボーンダイアグラムなどとも呼ばれます。特性要因図において重要な概念が「特性」と「要因」です。特性とは「現在の結果」のこと、そして要因とは「その結果をもたらすのに影響した要素」のことを指します。この特性と要因の間の因果関係を一目でわかるようにすることで、望ましくない結果をもたらした原因を明らかにするのが特性要因図の狙いです。特性要因図の歴史は古く、すでに50年以上ビジネスの現場で使われ続けています。考案者は「日本の品質管理の父」ともいわれる東京大学教授・石川馨です。彼が1956年に考案したといわれるこの特性要因図は、もともとは製造業の品質管理のために開発されたツールでした。しかし現在では、その汎用性の高さからビジネス一般における課題の分析ツールとしても使われています。特性要因図を書くと、問題点とそれに対する解決策を正確に把握できるようになります。問題解決の有効なツールとして、ビジネスパーソンなら知っておいて損はありません。

特性要因図のことを知っている人はどのくらいいる?

課題の分析や解決に役立つ特性要因図ですが、実際にその存在を知っている人はどれくらいいるのでしょうか。全国の男女300名にアンケート調査を実施してみました。

【質問】
特性要因図がどのようなものか知っていますか?

【回答結果】
知っている:53名
知らない:247名

調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年02月24日~2017年03月01日
有効回答数:300サンプル

知らない人が多いという残念な結果に……でも使った人の反応は上々!

アンケートをとったところ、特性要因図の存在を知らないという人が全体の8割以上を占めるというやや残念な結果になりました。

  • 申し訳ありません、存じ上げません。(50代/男性)
  • どういうものなのか予想もつかない。(40代/女性)

まったくわからないという声が多数聞かれる一方、仕事などで活用した経験のある人も。

  • 看護学校の時に、患者さんの病態や不便に思っていることを要因図として書きました。(30代/女性)
  • 仕事で新しいプロジェクトをしていた時に失敗の原因を、特性要因図を使って調べていきました(40代/男性)
  • 職場での業務改善を行う際に特性要因図を作成します。実際に書いたりしていました。いろいろな職場でQC活動をしているところも多く、その場合も特性要因図を使用しているので、使うメリットがあると思って使いました。(40代/男性)

「知っている」という皆さんの声を聞くと、製造業に限らずさまざまな業種で活用できるということが分かりますね。使ったことのある人にとっては、特性要因図はやはり便利なツールと感じられているようです。これまで作成したことない人も、挑戦してみる価値はあるのではないでしょうか。

特性要因図を作るメリットとは

トラブルや課題が発生したとき、それを解決するためにまず原因を検討するという人は多いのではないでしょうか。しかし頭の中で物事を整理しようとしたり、ただノートに箇条書きにしたりしているだけでは、考えをうまくまとめきれない恐れがあります。問題を適切に把握して対策を立てるためには、考えられる原因を漏れなく検討していく必要がありますが、きちんと系統立てて作業を行わないと、検討の内容に漏れが出たり、主観が入り込んでしまったりすることになりやすいのです。それではいくら原因を検討しても真実にはたどりつけませんし、したがって根本的な解決策を導き出すこともできません。そのときはうまく解決できたように思えたとしても、再び同じような過ちを繰り返してしまう可能性があるのです。そこで役立つのが特性要因図です。特性要因図を書くことで、要因と結果の因果関係を一目で把握することができます。さらに個々の要因を細かく分解していくことで、その要因を生み出す「要因」をも見つけ出すことができるようになります。頭の中で考えているだけでは気づかなかった、隠れた問題点をも分かるようになるのです。その結果、課題に対する具体的な解決策も見つかりやすくなります。

品質管理の分野以外でも使える特性要因図

もともとは製造業の品質管理のために編み出された特性要因図ですが、製造業以外の業種でもその手法は有効です。特性要因図の本来の用途ともいえる製造業の場合、大骨の「要因」としてよく使われるのが4Mというフレームです。4Mとは、人(man)、機会(machine)、方法(method)、材料(material)という4つの単語の頭文字をとったものです。4Mは不良品が発生する主な原因であり、それをしっかり管理することが品質管理の現場では重要視されます。こうしたことから特性要因図を書く時には、この4Mというフレームを意識して、大骨の部分を決めるとよいといわれています。ただこれはあくまで製造業のケースなので、業種によって当然使うべきキーワードも変わってきます。4Mをベースにしつつ、自分の業種にあった言葉に置き換えてみましょう。マーケティングの世界で使われるのが3C(顧客、競合、自社)、4P(製品、価格、流通、プロモーション)などの既存のフレームワークを使ってみるのもよいでしょう。もちろんフレームワークを使わず、大骨の段階からすべて自分で考えてしまっても構いません。ビジネスはもちろん、プライベートの問題解決にも使える汎用性の高さが特性要因図の魅力です。

特性要因図でできるビジネスパーソンになる

特性要因図の手法を身に着けることは、問題解決力の向上に役立ちます。製造業で品質管理に携わっている人などすでに活用済みという人はもちろん、それ以外の業種の人にとっても特性要因図のメリットは大きいです。特性要因図を使うと問題を視覚化して捉えることができるようになります。さらに、さまざまな課題の予防・解決に利用できる汎用性の高さも魅力。仕事のクオリティ改善の大きな助けになってくれるはずです。