WBSはプロジェクトのスケジュール管理に使うツールの1つで、プロジェクト内の作業工程を具体的なタスクの段階まで細かく分解したものです。実際のビジネスシーンにおいては、タスクの遂行スケジュールを表にしたガントチャートとよくセットで使われます。

WBSの作成はプロジェクト内にある個々のタスクを把握し、プロジェクト全体の概要を理解するのに欠かせない作業です。この作業がうまくいくかどうかでプロジェクトが成功するかどうかが決まります。ここではWBSの具体的な使い方や使用上の注意点について解説します。

WBSを使っている方はどれくらい?

プロジェクトのスケジュール管理においてWBSを使っている人はどれくらいいるのでしょうか。社会人100人を対象にアンケート調査を実施しました。

質問

スケジュール管理にWBSを使用していますか?

回答結果

はい:7
いいえ:93

アンケート概要

調査地域:全国
調査対象:【職業】パート・アルバイト 個人事業主 公務員 正社員 派遣社員 経営者
調査期間:2017年06月01日~2017年06月08日
有効回答数:100サンプル

使う機会は少ない人も多い?WBS

調査の結果ほとんどの人はWBSを使ったことがないか、もしくは使う機会がほとんどないと感じていることがわかりました。

  • WBSがなんのことなのかすでにわからない。(46歳/女性/個人事業主・フリーランス)
  • 沢山の人がかかわるプロジェクトで使用したことはありますが、日常的には使用していません。(44歳/男性/正社員)

そもそも「WBSの存在を知らなかった」という声も複数ありました。一方、日常的にWBSを活用しているという人も少数ながらいます。

  • 使っています。部の関係者と共有しています。(56歳/男性/正社員)
  • スケジュール管理に使うと便利だからです。(42歳/男性/個人事業主・フリーランス)

複数人とスケジュールを共用できるなど、使っている人にとっては欠かせないツールであるようです。
調査の結果、WBSの認知度は残念ながら一般的にはあまり高いものとはいえないようです。しかし、WBSは使い方を覚えておくとスケジュール管理・プロジェクト管理の効率を向上させてくれます。ではWBSを使うことには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。以下詳しく見ていくことにしましょう。

WBSって何のこと?

WBS(Work Breakdown Structure)はプロジェクトのスケジュール管理に使うツールの1つで、プロジェクトで必要となる作業工程を細かいタスクの段階まで分解し、リスト化したものです。プロジェクトはあくまで漠然とした計画なので、そのままの状態では最終的な目標だけしかわかりません。プロジェクトを実行に移すためには、作業工程を考え、それぞれの工程内でどんな作業が必要になるのか把握する必要があります。そこで使われるのがWBSです。WBSではWork(仕事)をBreakdown(細かく分解)し、Structure(構造化)することを目的としています。目標達成のために必要な作業を漏れなく洗い出し、把握するために作るのがWBSなのです。

WBSを作ると作業の抜け・重複を防げるほか、プロジェクトの範囲が明確になるため「取り組む作業」と「そうでない作業」がはっきりとします。WBSに挙げられているタスク以外は必要ないと判断できるため、無駄な作業に惑わされることなくプロジェクトを進められるようになるのです。
プロジェクト内のタスクの一覧表であるWBSは、よくガントチャート(各タスクの作業スケジュールや進捗状況などを棒グラフの形で書き表したもの)と組み合わせて使われます。このことから、WBSとガントチャートを合わせてWBSと呼ぶことも多いです。

WBSを使ってスケジュールを管理する目的は?

WBSを作成する目的の1つは各タスクの前後関係と期限を明確に把握することです。WBSを作ってプロジェクト内容を整理するとどのタスクをどの順番でこなすべきかがわかりますし、最終目的から逆算することで各タスクの期限もはっきり見えてきます。タスクのなかには別のタスクが終わって初めて実行に移せるものもあります。このときタスク同士の関連性が見えていないと、計画に無理が生じて現場が混乱してしまいがちです。WBSでタスク同士の依存関係をはっきりさせることで、実行に無理のない現実的なスケジュールが組めるようになります。

またWBSには一つひとつのタスクがプロジェクト全体に与える影響を視覚化するという目的もあります。プロジェクト内のタスクには遅れるとプロジェクト全体に影響を与えてしまうタスクとそこまで影響を与えないものがあります。もし全体に影響を与えるようなタスクで遅延が発生した場合、プロジェクト全体が納期に間に合わなくなるという事態に陥る可能性もあります。WBSでそれぞれのタスクとプロジェクト全体の関係を把握することで、プロジェクト全体への影響を考えながらそれぞれのタスクのスケジュールを管理できるようになります。

WBS作成時の注意点

プロジェクト管理には欠かせないツールともいえるWBSですが、いい加減に作成してしまうとプロジェクトが炎上する原因になります。WBSを使うときは次のようなことに注意してみましょう。
1つ目はそれぞれの作業工程・タスクをチケットと呼ばれる段階まで掘り下げてリスト化することです。チケットとはプロジェクト管理ツールで必要な作業を管理する単位のことです。この段階まで作業工程・タスクを分解しておくと漏れが減り、プロジェクト管理ツールへの入力もスムーズになります。

2つ目は承認フローも1つのタスクとしていれることです。承認フローにかかる時間も計算に入れておくことで、承認に時間をとられてスケジュールが遅延することがなくなります。

3つ目はタスク相互の関係を意識しながら作ることです。タスク同士の前後関係や依存関係を意識することで、初めて無理のないスケジュール作成ができます。

4つ目は必ず担当者を明確にすることです。担当者を決めていないと結局誰もそのタスクをやらないということになりがちです。誰がいつまでにやるのか責任の所在を明確にしておきましょう。

5つ目は納期だけを考えてWBSを作らないことです。まず納期ありきでWBSを作ってしまうと無理なスケジュールになりがちです。プロジェクトの作業工程や各タスク同士の依存関係を正確に把握してから、納期との調整を行なうようにしましょう。

WBSを利用し業務の進捗具合を管理

特にプロジェクトなどで複数のタスクを管理しなければならない場合、WBSを作ることには大きなメリットがあります。目的達成に必要なタスクをすべて洗い出せるだけでなく、タスク同士の関係も把握できるからです。その結果ムダのない、かつ無理なく実行可能なスケジュールを組めるようになります。納期ありきで作らないなどいくつかのコツを抑えれば、スケジュールを管理する上で大きな力になってくれるはずです。