当社はこれまで、製造業、建設業、金融業のそれぞれについて、ファイル管理における「隠れた業務負担」の実態調査を実施し、公表してきました。3業種は、扱うファイルの種類も、社内外の関係者も、承認の進め方も異なります。製造業では図面・作業標準書、建設業では設計図・施工図と現場での受け渡し、金融業では規程・帳票と稟議・決裁が中心となり、業務の形は大きく違います。

3調査はいずれも同一の抽出条件と同一の設問構成で実施しています。従業員数100名以上の企業に勤務する正社員で、直近1ヶ月以内に、社内外の複数人が扱う業務ファイルについて、作成・保存・更新・送付・配布・共有設定・承認依頼・承認・整理のいずれかを自ら行った方を対象としており、業種間の比較が可能です。

そこで3調査の回答を業種横断で再集計し、業種によって変わるものと、業種を問わず共通するものを切り分けました。

調査概要

  • 調査名称:製造業・建設業・金融業のファイル管理における「隠れた業務負担」横断比較調査
  • 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
  • 調査対象:各業種とも、従業員数100名以上の企業に勤務する正社員で、直近1ヶ月以内に、社内外の複数人が扱う業務ファイルについて、作成・保存・更新・送付・配布・共有設定・承認依頼・承認・整理のいずれかを自ら行った方
  • 有効回答:計315名(製造業108名/建設業105名/金融業102名)
  • 調査期間:製造業 2026年8月14日〜同年8月18日/建設業 2026年8月21日〜同年8月25日/金融業 2026年8月24日〜同年8月25日
    ※金融業は保険業を除きます。
    ※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
    ※業種ごとの実態を捉えるため、一部の設問では選択肢の文言を業種特性に合わせて調整しています。業種間で比較した項目は、3業種で選択肢の趣旨が対応するものに限っています。

製造業・建設業・金融業のファイル管理における「隠れた業務負担」横断比較調査

業務ファイルの保管・共有・受け渡しに使う場所や手段は、3業種とも「社内のファイルサーバー」が最多(60.2〜67.6%)。「メール添付による送付」(48.0〜55.2%)が続く

「Q2. あなたが、業務ファイルの保管・共有・受け渡しに使用している場所や手段を教えてください。(複数回答)」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

「社内のファイルサーバー」は3業種すべてで最も多く、60.2〜67.6%となりました。次いで「メール添付による送付」が48.0〜55.2%で続き、「自分のパソコン内、USBなどの外部メディア」(22.5〜34.3%)、「電子ファイルを印刷し、紙で保管・回覧」(13.3〜25.0%)も挙がっています。回答者1人あたり平均で約3つの場所・手段を選んでおり、複数を併用している実態がうかがえます。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
社内のファイルサーバー60.2%61.9%67.6%
メール添付による送付49.1%55.2%48.0%
オンラインストレージ・クラウドストレージ45.4%33.3%30.4%
チャットツールへの投稿・共有38.0%30.5%17.6%
文書管理システム29.6%24.8%41.2%
自分のパソコン内、USBなどの外部メディア25.0%34.3%22.5%
電子ファイルを印刷し、紙で保管・回覧(※2)25.0%13.3%19.6%
業種固有の業務システム(※1)22.2%29.5%36.3%

※1 製造業は「生産管理・基幹などの業務システム」、建設業は「施工管理システム・工事情報共有システム」、金融業は「稟議・ワークフローシステム」。
※2 建設業は「電子ファイルを印刷し、紙で保管・回覧・郵送・FAX」。
※回答者1人あたりの平均選択数は、場所・手段に該当する各選択肢の回答割合を合計して算出しています。

非効率と感じることの第1位・第2位が、3業種で完全に一致。「過去のファイル探し」46.1〜54.6%、「最新版・改訂履歴」38.2〜50.0%

「Q3. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、現在非効率だと感じていることを教えてください。(複数回答)」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

第1位は3業種とも「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」で、46.1〜54.6%。第2位も3業種とも「業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい」で、38.2〜50.0%となりました。第3位は「大容量ファイルの社外共有」(製造業・建設業。製造業は「確認・承認の依頼や変更内容の連絡」と同率)、「顧客情報を含む資料の社外共有」(金融業)と業種の事情が表れる一方、上位2項目は業種を問わず同じ順位で並んでいます。「特に非効率は感じていない」は4.6〜12.4%にとどまりました。また、「社外との共有がしづらい」という課題は3業種に共通しているものの、製造業・建設業では図面などの大容量ファイル、金融業では顧客情報の安全性と、直面しているハードルの種類は業種によって異なります。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる54.6%48.6%46.1%
業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい50.0%40.0%38.2%
社外との共有がしづらい(※1)30.6%34.3%28.4%
社外・移動先からファイルを確認しづらい(※2)25.0%29.5%25.5%
確認・承認の依頼や変更内容の連絡に手間がかかる(※3)30.6%17.1%22.5%
アクセス権限や操作履歴の管理に手間がかかる23.1%12.4%15.7%
特に非効率は感じていない4.6%12.4%9.8%

※1 製造業「大容量ファイルを協力会社など社外と共有しづらい」/建設業「大容量の図面・写真を社外関係者と共有しづらい」/金融業「顧客情報を含む資料を社外と安全に共有しづらい」。
※2 製造業「工場や外出先から」/建設業「現場や移動中に」/金融業「外出先や訪問先から」。
※3 金融業は「稟議・決裁の依頼や変更内容の連絡に手間がかかる」。

保存後の「確認・承認の進み具合の把握や再連絡」を別の手段で行う割合、製造業38.9%・建設業36.2%・金融業37.3%。業種間の差は2.7ポイント

「Q4. あなたが、業務ファイルを保存・更新した後に発生する作業のうち、ファイルを保存した場所だけでは完結せず、別の手段を併用しているものを教えてください。(複数回答)」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

3業種すべてで第1位となったのは「確認・承認の進み具合の把握や再連絡」で、製造業38.9%、建設業36.2%、金融業37.3%。業種間の差は2.7ポイントにとどまりました。承認の進め方が業種ごとに大きく異なるにもかかわらず、保存後に進捗を追いかける作業だけは同じ水準で発生しています。「更新や変更内容の関係者への連絡」(28.7〜32.4%)、「上長や関係者への確認・承認の依頼」(29.4〜35.2%)も3業種で近い値となりました。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
確認・承認の進み具合の把握や再連絡(※1)38.9%36.2%37.3%
上長や関係者への確認・承認の依頼(※2)35.2%29.5%29.4%
更新や変更内容の関係者への連絡(※3)28.7%32.4%29.4%
社内外の相手への送付・配布35.2%21.0%21.6%
共有設定やアクセス権限の設定・変更21.3%21.9%17.6%
台帳・管理表への転記(※4)15.7%9.5%15.7%

※1 金融業は「稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡」。
※2 金融業は「上長や関係部署への稟議・決裁の依頼」。
※3 建設業は「図面・書類の更新や変更内容の連絡」、金融業は「規程・帳票の改訂や変更内容の連絡」。
※4 建設業は「工事台帳・管理表への転記」、金融業は「顧客管理システム・管理表への転記」。

ファイルの検索・共有や保存後の連絡などに「週1時間以上」を費やす人は、3業種とも4割超(43.6〜49.5%)

「Q5. あなたが、業務ファイルの検索・共有、保存・更新後の連絡・配布、権限設定や台帳への転記などに費やしている時間は、1週間あたり平均でどの程度ですか。」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

「週1時間以上」を費やす回答者は、製造業43.6%、建設業49.5%、金融業47.1%で、3業種とも4割を超えました。週1時間は年間で約52時間に相当します。1回あたりは数分の作業であっても、業種を問わず、毎週繰り返し発生し続けている実態がうかがえます。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
週1時間以上(合計)43.6%49.5%47.1%
30分以上1時間未満37.0%24.8%28.4%
30分未満13.0%14.3%12.7%
わからない/答えられない6.5%11.4%11.8%

配布・共有したファイルを「相手が最新版を確認したか把握できていない」は、3業種とも3割超(33.3〜40.8%)

「Q6. あなたは、社内外の関係者が、最新版のファイルを確認したかどうかを把握できていると思いますか。」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

「あまりそう思わない」「全くそう思わない」の合計は、製造業40.8%、建設業33.3%、金融業35.3%となり、3業種とも3割を超えました。ファイルを渡した後も、相手が最新版を見たかどうかを確かめる作業が、業種を問わず担当者の手元に残っています。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
把握できていない(あまり+全くそう思わない)40.8%33.3%35.3%
把握できている(非常に+ややそう思う)51.8%50.4%47.1%
配布・共有する機会はない0.0%5.7%5.9%
わからない/答えられない7.4%10.5%11.8%

実害の出方だけが業種で分かれる。製造業は「手戻り・生産の遅れ」、建設業は「工程遅延・施工内容の食い違い」、金融業は「稟議停滞・顧客対応の遅れ」

「Q7. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、直近1年間に経験したことを教えてください。(複数回答)」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

保管の実態、非効率の内容、保存後の負担が3業種で共通していた一方、それが何として表面化するかは業種ごとに分かれました。同じ原因が、業種ごとに違う損失として現れています。

製造業:「必要なファイルが見つからず、業務が滞った」43.5%/「確認・承認が滞り、生産や業務の予定が遅れた」38.9%/「改訂前の図面・手順書で作業が進み、手戻りが発生した」18.5%

建設業:「確認・承認が滞り、工程に遅れが生じた」31.4%/「変更が伝わらず、再確認や施工内容の食い違いが発生」30.5%/「改訂前の図面・書類で作業が進み、手戻りが発生した」20.0%

金融業:「稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた」28.4%/「必要な資料が見つからず、顧客対応が滞った」26.5%/「改訂前の規程・帳票で対応が進み、やり直しが発生」23.5%

本設問は業種ごとに選択肢の文言を調整しているため、業種間で数値を直接比較することはできません。ここでは、ファイル管理の負担が、製造業では生産、建設業では工程と施工内容、金融業では顧客対応と、いずれも本業の成果に届いている点を示しています。なお「改訂前の資料で作業が進み、手戻りが発生した」に相当する項目は、3業種とも18.5〜23.5%で発生していました。

ファイル管理サービスの選定基準は、上位3項目が3業種で完全一致。「導入・運用にかかる費用」より「最新版の把握」「検索性」「セキュリティ」が優先

「Q8. あなたが、業務ファイルを扱う製品やサービスを選ぶとしたら、どのような条件を重視するか教えてください。(上位3つまで回答可)」(製造業 n=108/建設業 n=105/金融業 n=102)

選定基準の上位3項目は、製造業・建設業・金融業のすべてで同一の顔ぶれとなりました。「最新版と改訂履歴がすぐにわかること」(39.2〜47.6%)、「過去のファイルを素早く探し出せること」(42.2〜44.4%)、「セキュリティ・情報漏えい対策」(35.3〜37.1%)が並び、順位が入れ替わるだけで項目そのものは変わりません。

一方、「導入・運用にかかる費用」は、建設業では24.8%(4位)と約4分の1が重視しているものの、製造業10.2%(7位)、金融業15.7%(5位)と業種で差がありました。3業種を通してみると、費用以上に「最新版と改訂履歴の把握」「過去ファイルの検索性」「セキュリティ」の上位3項目が選定基準の中心となっていることがわかります。「承認・通知・配布を同じ環境で進められること」は製造業34.3%(4位)、金融業28.4%(4位)、建設業15.2%(5位)と業種差が出ており、上位3項目は業種を問わず共通する一方、4つ目からは業種ごとの事情が表れる構造となっています。

項目製造業 (n=108)建設業 (n=105)金融業 (n=102)
最新版と改訂履歴がすぐにわかること46.3%(1位)47.6%(1位)39.2%(2位)
過去のファイルを素早く探し出せること44.4%(2位)43.8%(2位)42.2%(1位)
セキュリティ・情報漏えい対策37.0%(3位)37.1%(3位)35.3%(3位)
承認・通知・配布を同じ環境で進められること34.3%(4位)15.2%(5位)28.4%(4位)
誰がいつ閲覧・操作したかの記録が残ること17.6%13.3%15.7%
大容量ファイルを社内外と安全に共有できること13.0%13.3%8.8%
導入・運用にかかる費用10.2%(7位)24.8%(4位)15.7%(5位)
自社の承認ルールや業務の進め方に合わせやすいこと3.7%3.8%6.9%

まとめ

今回は、従業員数100名以上の製造業・建設業・金融業に勤務する正社員で、直近1ヶ月以内に社内外の複数人が扱う業務ファイルを自ら扱った計315名の回答を、業種横断で再集計しました。

選定基準の上位3項目は、3業種すべてで同一の顔ぶれとなりました。「導入・運用にかかる費用」は建設業で24.8%(4位)と一定の重視がみられたものの、3業種いずれも上位3項目には届いていません。3業種に共通していたのは、選定基準の上位3項目と、保存・更新後の確認や連絡が保存した場所の外で行われているという実態です。本調査は、業種を問わず適用できる選定基準として、次の基準を提示します。

【ファイル管理サービス選定基準】

基準1|最新版と改訂履歴に迷わずたどり着けるか
保存されているファイルのうち、どれが最新版で、いつ何が変わったのかを、担当者に確認せずに判断できること。

基準2|過去のファイルを短時間で探し出せるか
保管場所を記憶していなくても、内容から目的のファイルにたどり着けること。3業種すべてで非効率の第1位。

基準3|社内外で安全に扱え、操作の記録が残るか
社外へ渡す場面でも権限を制御でき、誰がいつ何をしたかを後から確認できること。

基準4|保存後の承認・通知・配布を同じ環境で完結できるか(15.2〜34.3%)
保存した場所の中で、承認依頼から進捗確認、変更連絡、配布までを進められること。業種により重要度が変動します。