不動産業では、物件資料や重要事項説明書・契約書、申込書・本人確認書類、修繕の見積書・報告書など、本部・店舗・オーナー・仲介業者・顧客の間で多くのファイルをやり取りします。2022年5月の改正法施行で重要事項説明書などの電子交付が可能になった一方で、過去の契約書類の検索や物件資料の最新版の確認、個人情報を含む書類の共有、保存後の承認依頼は、メールや電話など保存場所の外で発生しがちです。なお、不動産業では登記関連書類や顧客の希望により紙を併用する合理的な理由があるため、本調査は紙の利用自体ではなく、電子ファイル業務に残る負担を対象としています。
今回は製造業・建設業・金融業・卸売業に続き不動産業を対象に、保存後に残る「隠れた業務負担」の実態と、かかる時間や契約・顧客対応への影響、ファイル管理サービスに求める条件を調査しました。
調査サマリー
- 43.6%が「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」と回答。変更後の物件資料・募集条件を相手が確認したか「把握できていない」は42.8%、直近1年で25.5%が契約内容や条件の食い違いを経験
- 72.7%が、保存・更新後の作業のいずれかを別の手段で実施。検索・共有や保存後の連絡などに週1時間以上を費やす人は49.9%
- 選定基準の第1位は「セキュリティ・情報漏えい対策」(47.3%)、第2位は「過去のファイルを素早く探し出せること」(44.5%)。費用は15.5%にとどまる
調査概要
- 調査名称:不動産業のファイル管理における「隠れた業務負担」の実態調査
- 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
- 調査期間:2026年9月28日〜2026年9月30日
- 有効回答:従業員数100名以上の不動産業に勤務する正社員で、直近1ヶ月以内に、社内外の複数人が扱う業務ファイルについて、作成・保存・更新・送付・配布・共有設定・承認依頼・承認・整理のいずれかを自ら行った110名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
不動産業のファイル管理における「隠れた業務負担」の実態調査
不動産業で日常的に扱う電子ファイル、「物件資料」56.4%、「重要事項説明書・契約書」55.5%が上位。「社内規程・業務マニュアル・研修資料」48.2%が続く
「Q1. あなたが、業務で日常的に扱っている電子ファイルの種類を教えてください。(複数回答)」(n=110)
「物件概要書・募集図面・間取図などの物件資料」が56.4%で最も多く、「重要事項説明書・売買契約書・賃貸借契約書」が55.5%、「社内規程・業務マニュアル・研修資料」が48.2%と続きました。物件写真・現地調査記録(47.3%)、申込書・本人確認書類などの顧客書類(43.6%)、修繕・原状回復の見積書・報告書や入居者対応記録(40.9%)も4割を超え、募集から契約、入居後の管理まで、幅広いファイルを日常的に扱っていることがわかります。

- 物件概要書・募集図面・間取図などの物件資料:56.4%
- 重要事項説明書・売買契約書・賃貸借契約書:55.5%
- 社内規程・業務マニュアル・研修資料:48.2%
- 物件写真・現地調査記録・内見報告:47.3%
- 申込書・本人確認書類・収入証明などの顧客書類:43.6%
- 修繕・原状回復の見積書・報告書、入居者対応記録:40.9%
- 公図・測量図・登記事項証明書などの権利関係書類:38.2%
- 査定書・価格表・顧客への提案資料:36.4%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:10.0%
業務ファイルの保管・共有・受け渡しの手段は「社内のファイルサーバー」67.3%が最多。「メール添付による送付」46.4%、「文書管理システム」37.3%が続く
「Q2. あなたが、業務ファイルの保管・共有・受け渡しに使用している場所や手段を教えてください。(複数回答)」(n=110)
「社内のファイルサーバー」が67.3%で最も多く、「メール添付による送付」が46.4%、「文書管理システム」が37.3%、「物件管理・賃貸管理・顧客管理などの業務システム」が33.6%と続きました。紙での保管・回覧・郵送・FAX(29.1%)は、登記関連書類や顧客の希望、物件確認でFAX・郵送を使う商習慣から併用されている面もあると考えられます。保管の場所と受け渡しの手段があわせて使われ、経路が複数に分かれている実態がうかがえます。

- 社内のファイルサーバー:67.3%
- メール添付による送付:46.4%
- 文書管理システム:37.3%
- 物件管理・賃貸管理・顧客管理などの業務システム:33.6%
- オンラインストレージ・クラウドストレージ:31.8%
- 電子ファイルを印刷し、紙で保管・回覧・郵送・FAX:29.1%
- チャットツールへの投稿・共有:28.2%
- 自分のパソコン内、USBなどの外部メディア:28.2%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:2.7%
43.6%が「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」、32.7%が「最新版や改訂履歴がわかりにくい」と回答
「Q3. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、現在非効率だと感じていることを教えてください。(複数回答)」(n=110)
「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」が43.6%で最も多く、「業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい」が32.7%、「個人情報を含む書類を顧客・社外と安全に共有しづらい」が30.0%と続きました。「特に非効率は感じていない」は23.6%でした。

- 過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる:43.6%
- 業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい:32.7%
- 個人情報を含む書類を顧客・社外と安全に共有しづらい:30.0%
- 確認・承認の依頼や変更内容の連絡に手間がかかる:22.7%
- アクセス権限や操作履歴の管理に手間がかかる:20.0%
- 物件案内や現地調査の外出先から、資料を確認しづらい:16.4%
- その他:0.9%
- 特に非効率は感じていない:23.6%
- わからない/答えられない:3.6%
72.7%が、ファイル保存・更新後の作業のいずれかを別の手段で実施。最多は「上長や関係者への確認・承認の依頼」38.2%
「Q4. あなたが、業務ファイルを保存・更新した後に発生する作業のうち、ファイルを保存した場所だけでは完結せず、別の手段を併用しているものを教えてください。(複数回答)」(n=110)
「上長や関係者への確認・承認の依頼」が38.2%で最も多く、「確認・承認の進み具合の把握や再連絡」が34.5%、「物件情報・募集条件の更新や変更内容の連絡」が31.8%と続きました。「特に作業は発生していない」「わからない/答えられない」以外を選んだ人は72.7%で、ファイルを保存した後も、承認依頼や進捗確認、変更の連絡などが保存場所の外で発生している状況がうかがえます。

- 上長や関係者への確認・承認の依頼:38.2%
- 確認・承認の進み具合の把握や再連絡:34.5%
- 物件情報・募集条件の更新や変更内容の連絡:31.8%
- 顧客・オーナー・仲介業者・関係部署への送付・配布:26.4%
- 共有設定やアクセス権限の設定・変更:17.3%
- 物件管理・顧客管理システム・管理表への転記:16.4%
- その他:0.0%
- 特に作業は発生していない:21.8%
- わからない/答えられない:5.5%
ファイルの検索・共有や保存後の連絡などに「週1時間以上」を費やす人は49.9%
「Q5. あなたが、業務ファイルの検索・共有、保存・更新後の連絡・配布、権限設定や台帳への転記などに費やしている時間は、1週間あたりどの程度ですか。」(n=110)
「1時間以上2時間未満」が30.0%で最も多く、「30分以上1時間未満」が26.4%と続きました。「1時間以上2時間未満」「2時間以上4時間未満」「4時間以上8時間未満」「8時間以上」を合わせると49.9%となり、約半数がファイルの検索・共有や保存後の作業に週1時間以上を費やしています。

- 30分未満:15.5%
- 30分以上1時間未満:26.4%
- 1時間以上2時間未満:30.0%
- 2時間以上4時間未満:13.6%
- 4時間以上8時間未満:3.6%
- 8時間以上:2.7%
- わからない/答えられない:8.2%
変更後の物件資料・募集条件を相手が確認したか「把握できていない」は42.8%
「Q6. あなたは、社内外の関係者(他の店舗・部署の担当者、オーナー・管理会社、仲介業者など)が、変更後の物件資料・募集条件を確認したかどうかを把握できていると思いますか。」(n=110)
「あまりそう思わない」が37.3%、「全くそう思わない」が5.5%となりました。両者を合わせると42.8%に達し、物件資料や募集条件を変更した後、相手が確認したかどうかを把握できていない人が4割を超えています。

- 全くそう思わない:5.5%
- あまりそう思わない:37.3%
- ややそう思う:24.5%
- 非常にそう思う:16.4%
- 物件資料・募集条件を配布・共有する機会はない:8.2%
- わからない/答えられない:8.2%
直近1年間で「変更が伝わらず、契約内容や条件の食い違いが発生」は25.5%、「改訂前の物件資料・条件で案内が進み、訂正が発生」は22.7%
「Q7. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、直近1年間に経験したことを教えてください。(複数回答)」(n=110)
「変更が伝わらず、契約内容や条件の食い違いが発生」が25.5%で最も多く、「改訂前の物件資料・条件で案内が進み、訂正が発生」が22.7%、「物件・部屋別の履歴が見つからず、対応が滞った」が20.0%、「契約書類の確認・承認が滞り、契約や引渡しが遅れた」が19.1%と続きました。「特に経験していない」「わからない/答えられない」以外を選んだ人は59.1%で、ファイル管理の負担が契約や引渡し、顧客対応にまで及んでいる様子がうかがえます。

- 変更が伝わらず、契約内容や条件の食い違いが発生:25.5%
- 改訂前の物件資料・条件で案内が進み、訂正が発生:22.7%
- 物件・部屋別の履歴が見つからず、対応が滞った:20.0%
- 契約書類の確認・承認が滞り、契約や引渡しが遅れた:19.1%
- 立入検査・監査や顧客の請求で、過去の書類集めに苦労:8.2%
- 個人情報を含む書類を意図しない相手に送信した:1.8%
- その他:0.0%
- 特に経験していない:38.2%
- わからない/答えられない:2.7%
物件・部屋ごとの資料の扱いで手間なのは「契約・修繕・入居者対応の資料がつながっていない」29.1%、「協力会社から届く見積書・報告書の回収に手間」28.2%
「Q8. あなたが、物件や部屋ごとに関連する資料をまとめて扱う際に、手間だと感じることを教えてください。(複数回答)」(n=110)
「契約・修繕・入居者対応の資料がつながっていない」が29.1%で最も多く、「協力会社から届く見積書・報告書の回収に手間」が28.2%、「物件・部屋ごとに資料が別々の場所に保存されている」が23.6%と続きました。「特に手間だと感じることはない」は15.5%、「物件・部屋ごとの資料を扱う業務はない」は12.7%でした。同じ物件・部屋の資料が契約・修繕・入居者対応で分かれ、社外から届く資料の回収や整理し直しにも手間がかかっている様子がうかがえます。

- 契約・修繕・入居者対応の資料がつながっていない:29.1%
- 協力会社から届く見積書・報告書の回収に手間:28.2%
- 物件・部屋ごとに資料が別々の場所に保存されている:23.6%
- 受け取った資料を物件・部屋ごとに整理し直している:20.9%
- 過去の担当者が残した資料の所在がわからない:20.9%
- 契約書の修正案と締結済みの書類が混在している:9.1%
- その他:0.0%
- 特に手間だと感じることはない:15.5%
- 物件・部屋ごとの資料を扱う業務はない:12.7%
- わからない/答えられない:4.5%
不動産業がファイル管理サービスに求める基準、第1位は「セキュリティ・情報漏えい対策」47.3%。「導入・運用にかかる費用」は15.5%
「Q9. あなたが、業務ファイルを扱う製品やサービスを選ぶとしたら、どのような条件を重視するか教えてください。(上位3つまで回答可)」(n=110)
「セキュリティ・情報漏えい対策」が47.3%で最も多く、「過去のファイルを素早く探し出せること」が44.5%、「最新版と改訂履歴がすぐにわかること」が40.9%、「承認・通知・配布を同じ環境で進められること」が30.0%と続きました。「導入・運用にかかる費用」は15.5%で、上位4項目を下回っています。不動産業では、安全に扱えることに加え、必要なファイルを探せること、最新版を確かめられることが重視されています。

- セキュリティ・情報漏えい対策:47.3%
- 過去のファイルを素早く探し出せること:44.5%
- 最新版と改訂履歴がすぐにわかること:40.9%
- 承認・通知・配布を同じ環境で進められること:30.0%
- 大容量ファイルを社内外と安全に共有できること:20.9%
- 導入・運用にかかる費用:15.5%
- 誰がいつ閲覧・操作したかの記録が残ること:10.9%
- 自社の承認ルールや業務の進め方に合わせやすいこと:4.5%
- その他:0.0%
- わからない/答えられない:6.4%
「情報漏洩や持ち出し」「どこに、なにがあるか、わかりやすいこと」などの声も
「Q10. Q9で「わからない/答えられない」以外を回答した方にお聞きします。Q9で回答した以外に、業務ファイルを扱う製品やサービスを選ぶ際に重視する条件があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=103)
81件の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
- 情報漏洩や持ち出し
- 検索インデックスを必要に応じて変えられる
- 保管できる容量(ストレージ)
- どこに、なにがあるか、わかりやすいこと
- 費用や個人情報を取り扱うため漏洩などの危険がないか重視しています
まとめ
今回は、不動産業に勤務する110名を対象に、ファイル管理における「隠れた業務負担」の実態を調査しました。
非効率の上位は過去のファイル探し(43.6%)と最新版の確認(32.7%)でした。変更後の物件資料・募集条件を相手が確認したか把握できていない人は42.8%、直近1年で契約内容や条件の食い違いを経験した人は25.5%です。物件・部屋ごとの資料では、契約・修繕・入居者対応の資料がつながっていないこと(29.1%)や、協力会社からの資料回収(28.2%)が手間として挙がりました。
| 選定基準では、セキュリティ(47.3%)、検索性(44.5%)、最新版・改訂履歴(40.9%)が費用(15.5%)を上回り、不動産業ではファイルを安全に扱えることや、過去のファイルをすぐに探せること、必要なファイルの最新版・改訂履歴をすぐに確かめられることが重視されています。一方で、変更が伝わらないことによる契約内容や条件の食い違いも起きており、変更後の物件資料や募集条件が関係者に届いたかを追える仕組みは、こうしたトラブルを防ぐ上で重要だと考えます。 |
