ファイル共有の業務フローを改善するには、まずAs-Is(現状の業務フロー)を作成し、ファイルが「誰から誰へ・どの手段で・何回」渡るかを可視化します。次に、受渡しポイントごとの手戻りを記録し、To-Be(改善後の業務フロー)を設計します。保管場所と正しい版を明確にし、KPIで効果を確かめます。

この記事では、メール添付・手渡し・再アップロードが重なっている現場を想定し、As-Is図の描き方、受渡しポイントの洗い出し、手戻りの測り方、To-Be案とKPIの作り方を、記入例を交えて解説します。

ファイル共有の業務フローを見直すべき理由

よくある現場の状況

業務改善担当やDX推進担当が現場にヒアリングすると、次のような声がよく出てきます。

  • 営業が作った見積書を、メール添付で上長に送って確認してもらっている
  • 修正版を再びメールで送るため、受信箱に複数の版が残る
  • 承認後のファイルを、担当者が共有フォルダへ改めてアップロードしている
  • 社外の取引先から届いたファイルを、USBメモリや紙で別部署へ渡している

一つひとつの作業は数分で終わるため、問題として認識されにくいのが特徴です。しかし、同じファイルを複数の経路で受け渡す運用では、保存場所や版の管理が複雑になり、「どれが最新版か分からない」「承認前の版で作業してしまった」といった手戻りが発生しやすくなります。また、メール添付による受渡しが増えるほど、宛先や添付ファイルを誤る機会も増えます。

ファイル共有の業務フロー改善は現状の可視化から始める

「ツールを入れれば効率化できる」と考える前に、まず現状のファイルの動きを図にすることが出発点です。改善は次の順で進めます。

  1. As-Is図でファイルの経路を可視化する
  2. 受渡しポイントを洗い出し、手段と回数を記録する
  3. 手戻りを件数と原因で測定する
  4. 重複経路をなくしたTo-Be案を作る
  5. KPIを設定し、改善後に見直す

現状の業務フローを可視化する(As-Is図)

As-Is図に書く要素

As-Is図は、ファイルの「流れ」を追うための図です。業務手順書とは異なり、人の作業よりもファイルの移動に焦点を当てます。登場人物・部署、対象ファイル、受渡し手段、保管場所、版の情報を図に書き込みましょう。例えば見積書なら、営業担当・営業課長・経理・取引先の間をメール添付や手渡しで移動する流れと、個人PCや部署フォルダなどの保存場所を記録します。

As-Is図の記入例(見積書の承認フロー)

以下は、見積書の作成から社外送付までを想定した記入例です。

この図から、見積書の初版や修正版がメールで受け渡され、承認版も部署共有フォルダへの保存、経理への手渡し、取引先への送付といった複数の経路で扱われていることが分かります。こうした運用では、版ごとの保存場所が分散し、どれが承認済みのファイルなのか判断しにくくなるおそれがあります。

作成時のポイント

  • 実際の担当者に、直近の1件を思い出して説明してもらう
  • 「本来の手順」ではなく「実際にやっていること」を書く
  • 例外対応(急ぎの場合は電話で口頭承認など)も漏らさず書く

受渡しポイント

受渡しポイントとは

受渡しポイントとは、ファイルがある人・場所から別の人・場所へ移る地点です。As-Is図の矢印一本一本がこれにあたります。改善の対象は、この受渡しポイントに集中します。

受渡しポイントの洗い出しシート(記入例)

No.渡す人・起点受け取る人・移動先手段対象・版重複の有無
1営業担当営業課長メール添付初版−
2営業課長営業担当メール返信修正指示初版への修正指示
3営業担当営業課長メール添付修正版No.1と同経路
4営業課長営業担当メール返信承認通知−
5営業担当部署共有フォルダアップロード承認版承認版がメールにも残る
6営業担当経理印刷・手渡し承認版No.5と内容重複
7経理経理のPCスキャン・保存承認版No.6の紙を再電子化
8営業担当取引先メール添付承認版−

重複を見分ける3つの観点

洗い出したポイントは、次の観点で分類すると改善対象が絞りやすくなります。

  • 同一経路の繰り返し:修正のたびに同じ相手へ添付を送り直している
  • 同一内容の多重保管:同じ版が複数の場所に置かれている
  • 手段の切り替え:デジタルから紙、紙から再びデジタルへと形式が変わっている

特に「手段の切り替え」が起きるポイントは、転記ミスや版の取り違えが起きやすい箇所です。

手戻り測定

何を手戻りとして数えるか

手戻りは、感覚ではなく記録で把握します。対象期間を決め、受渡しポイントごとに次のような事象を記録します。

  • 古い版で作業してしまい、やり直しになった
  • 宛先や添付ファイルを間違えて再送した
  • 必要なファイルが見つからず、送り直しを依頼した
  • 承認済みかどうかを確認するために問い合わせが発生した

手戻り記録表(記入例)

日付受渡しポイントNo.事象原因対応にかかった作業
○月○日3課長が修正版ではなく初版を確認したメールに複数の版が残っていた再確認・再送
○月○日6経理が未承認版を確認した印刷時に版を取り違えた再印刷・再確認
○月○日5部署共有フォルダに承認版がない承認後のアップロードを忘れた担当者への問い合わせ

測定時の注意点

  • 担当者を責める記録にしない。原因は「人」ではなく「経路や仕組み」に寄せて書く
  • 期間中は記録の手間を最小限にし、後から集計できる形にする
  • 件数だけでなく、手戻りが起きたポイントの番号を必ず残す

ポイント番号と手戻りを紐づけることで、「どの受渡しで問題が集中しているか」が分かり、To-Be案の優先順位が決めやすくなります。

改善後の業務フローを設計する(To-Be図)

To-Be案を作る基本方針

To-Be案は、As-Is図で見つかった重複経路を減らすことを目的に作ります。考え方は次の3つです。

  1. 保管場所を一つに決める:ファイルの「正」となる置き場所を定める
  2. ファイルを送らず、場所を共有する:添付で送るのではなく、保管場所へのアクセスで受け渡す
  3. 版を保管場所側で管理する:ファイル名の末尾に「_修正版2」と付ける運用に頼らない

To-Be図の記入例(見積書の承認フロー)

As-IsとTo-Beの比較

観点As-IsTo-Be
ファイルの置き場所個人PC・受信箱・部署フォルダ・経理PCに分散共有の保管場所に一元化
修正時の受渡し修正のたびに添付を再送同じファイルを更新して通知
版の識別ファイル名や送信日時で判断保管場所側で更新履歴を管理
承認状態の確認メールの返信内容などから判断承認結果を記録し、承認済みの版を明確にする
経理への共有印刷して手渡し閲覧権限の付与
再アップロード承認後に手作業で実施不要

To-Be案は理想形を一度で目指す必要はありません。手戻り測定で件数が多かった受渡しポイントから順に置き換えるほうが、現場の合意も得やすくなります。

ファイル共有の改善にFleekdriveを活用する

Fleekdriveは、ファイル共有や文書管理、アクセス権限管理、バージョン管理などの機能を備えた法人向けオンラインストレージです。ファイルの保管場所を集約し、メール添付による受渡しや版の取り違えを減らすための環境づくりに活用できます。

To-Be案に必要な要件として、部署・案件単位の保管場所、閲覧権限の設定・変更、過去版の扱い、社外共有時の制御範囲を整理しましょう。

KPIの見直し

設定するKPIの例

To-Be案の効果は、As-Isで測定した項目と同じ物差しで比べます。測定方法を変えると、改善の有無が判断できなくなるためです。

KPI測り方As-Isとの比較方法
1件あたりの受渡し回数対象業務1件について、ファイルの送付・手渡し・アップロードなどの実施回数を記録する改善前後で同じ対象業務・集計条件を用いて比較する
手戻り件数手戻り記録表を同じ形式で継続同じ期間の長さに加え、対象業務の処理件数も確認する。業務量が異なる場合は、100件あたりの手戻り件数などに換算して比較する
保管場所の数同じファイルが存在する場所を数えるAs-Is図の保管場所数と比較
版の問い合わせ件数「最新版はどれか」の問い合わせを記録改善前の記録と比較

見直しのタイミング

  • 新しいフローの運用開始直後は、現場が慣れるまで手戻りが一時的に増えることがあります。短期の数値だけで判断しないようにします
  • 一定期間運用した後、As-Is図とTo-Be図を並べ、実際の運用がTo-Be図どおりになっているかを確認します
  • To-Be図から外れた「新しい例外経路」が生まれていれば、それを次のAs-Isとして再度分析します

業務フロー改善を定着させるための注意点

  • 「ツール導入=改善完了」ではありません:保管場所を用意しても、メール添付の習慣が残れば重複経路はなくなりません
  • KPIは少なくて構いません:多くの指標を追うと記録負担が増え、現場が続けられなくなります
  • すべての業務を一度に対象にする必要はありません:手戻りの多い1業務から始めるほうが、成果を示しやすくなります

よくある質問

ファイル共有業務のAs-IsとTo-Beはどう作る?

As-Isは、対象ファイルが「誰から誰へ・どの手段で・どこに保管されたか」を、実際の1件をもとに図にして作ります。To-Beは、As-Isで見つかった重複経路と手戻りの多い受渡しポイントを対象に、保管場所を一つに決め、添付で送る代わりに保管場所を共有する形で作ります。

As-Is図はどのくらい細かく書けばよいですか?

ファイルが移動する矢印をすべて書ける粒度が目安です。人の細かな作業手順までは不要ですが、印刷・スキャン・再アップロードのように形式や場所が変わる動きは必ず書きます。

手戻りの記録を現場に頼むと負担になりませんか?

記録項目を日付・ポイント番号・事象・原因程度に絞ると負担を抑えられます。期間を区切り、目的が担当者の評価ではなく経路の改善であることを事前に伝えることも大切です。

To-Be案を作る前にツールを決めるべきですか?

先にTo-Be案と機能要件を整理することをおすすめします。要件が明確になっていれば、候補サービスの公式情報と照らし合わせて、必要な機能に対応しているかを確認しやすくなります。

As-IsとTo-Beを比較し、ファイル共有の手戻りを減らす

ファイル共有の業務フローを改善するには、まずAs-Is図でファイルの受渡し経路・保管場所・版の状態を可視化し、手戻りが発生するポイントを特定します。その結果をもとに、共有の保管場所と承認済みの版を明確にしたTo-Be図を作成しましょう。

改善後は、ファイルの受渡し回数や手戻り件数などを同じ条件で測定し、効果を検証することが大切です。Fleekdriveを活用する場合も、先に業務上の課題と必要な機能を整理することで、改善後のフローに合った運用を検討しやすくなります。