退職者が管理していたファイルは、退職日より前に対象を棚卸しし、所有者と後任者を確定したうえで共有リンクと権限を整理し、承認を経て移管します。最後に後任者が開けるかを確認し、引継ぎ表に記録して完了とします。
本記事では、クラウドストレージ上の業務データの引継ぎに絞って手順を解説します。退職者アカウントの停止・削除の進め方は扱いません。
Contents
退職者のデータ引継ぎで起こる問題と基本的な進め方
退職後に起きやすい問題
クラウドストレージでは、ファイルやフォルダが「作成した個人」にひも付いて管理されていることがあります。そのため、退職時に次のような問題が起きやすくなります。
- 退職者の個人フォルダに保管されていた見積書や提案書の最新版を、後任者が見つけられない
- 取引先と共有していたリンクの管理者が不在になり、公開を続けるべきか判断できない
- 部署の共有フォルダ内にある退職者作成のファイルについて、誰が更新・削除してよいのかが曖昧になる
- アカウントの扱いを先に決めてしまい、引き継ぐべきデータの確認が後回しになる
アカウントの処理とデータ引継ぎを分けて進める
退職時の作業は、大きく「アカウントの処理」と「データの引継ぎ」に分かれます。両者は担当者や判断基準が異なるため、分けて管理すると漏れを防ぎやすくなります。
| 観点 | アカウントの処理 | データの引継ぎ |
| 主な目的 | 退職者がアクセスできない状態にする | 業務資料を後任者が使い続けられる状態にする |
| 主な判断者 | 情報システム部門など、アカウント管理を担当する部門 | 業務上の必要性は所属部門の上長・後任者が判断し、情報システム部門などが技術的な作業を支援する |
| 判断の単位 | ユーザー単位 | ファイル・フォルダ・共有リンク単位 |
| 確認すべきこと | 停止の時期・方法 | 対象の範囲、新しい所有者、共有先、保管か削除か |
| 完了の基準 | 社内規程に沿って処理されている | 後任者が業務に必要なファイルを開けて、記録が残っている |
データの引継ぎは、次の5つのステップで進めます。
- 対象の棚卸し
- 所有者確認
- 共有リンク整理
- 引継ぎ承認
- 完了チェック
対象の棚卸し
最初に、退職者が関わっていたデータを洗い出します。ここで漏れたファイルは後のステップでも扱われないため、棚卸しが最も重要な工程です。
洗い出す範囲
- 退職者の個人フォルダ(マイフォルダなど)に保存されているファイル
- 退職者が作成・更新を担当し、部署やプロジェクトの共有フォルダに保存している業務ファイル(後任者への引継ぎが必要なもの)
- 退職者が管理者・オーナーになっている共有フォルダ
- 退職者が発行した社外向けの共有リンク
- 退職者だけがアクセス権を持っているフォルダ
棚卸しの進め方
- 情報システム部門が、管理画面などで確認できる範囲で退職者が所有・管理するデータの一覧を出す
- 退職者本人が、業務で使用中のファイルと不要なファイルを仕分ける
- 上長が、業務上必要なデータが一覧から漏れていないかを確認する
一覧を管理画面で出せるかどうか、どの単位で出せるかは、利用しているクラウドストレージによって異なります。自社の環境で何を確認できるかを事前に把握しておくと、作業期間の見積もりが立てやすくなります。
仕分けの判断基準
| 区分 | 判断の目安 | 引継ぎ後の扱い |
| 継続利用 | 後任者が今後も更新・参照する | 後任者または共有フォルダへ移管 |
| 保管 | 更新はしないが、記録として残す必要がある | 保管用フォルダへ移し、閲覧権限を整理 |
| 削除候補 | 重複ファイルや不要な下書きのうち、法令・契約・社内規程に基づく保存義務がなく、業務上も保管する必要がないもの | 上長の承認後に社内規程に沿って削除 |
| 判断保留 | 必要性を退職者本人しか判断できない | 退職日前に本人と上長で決定 |
判断保留を退職日後に持ち越さないことがポイントです。退職後は本人への確認が難しくなるため、ファイルの用途や管理状況について、在籍中に確認しておくことが重要です。
所有者確認
棚卸ししたデータごとに、引継ぎ後の所有者を決めます。
所有者の決め方
- 担当業務が後任者に移る場合:後任者を管理責任者とし、必要に応じてファイルの所有者やアクセス権限を変更する
- 複数人で使うデータの場合:部署の共有フォルダで管理し、管理責任者とアクセス権限を明確にする
- 後任者が未定の場合:上長などを暫定的な管理責任者とし、後任者の着任後に管理体制を見直す
個人を所有者にすると、その人が異動・退職したときに同じ問題が繰り返されます。部署やチームで使い続けるデータは、共有フォルダ側で管理する形に切り替えることも検討してください。
所有者変更の前に確認すること
- 所有者を変更したときに、既存の共有設定やアクセス権がどう扱われるか
- 所有者の変更を管理者が代理で実施できるか、本人の操作が必要か
- 移動やコピーをした場合に、更新履歴や過去の版が引き継がれるか
これらの挙動はサービスや設定によって異なります。作業の前に、利用中のサービスの公式情報で仕様を確認してください。
共有リンクの整理
退職者が発行した共有リンクは、所有者を変えるだけでは整理されないことがあります。特に社外向けのリンクは、相手先の業務に影響するため、個別に判断します。
共有リンクごとの判断
| 状況 | 対応の例 |
| 取引先とのやり取りが継続する | 後任者が管理する形で共有を継続し、相手先に担当変更を連絡 |
| 案件が終了している | 共有を停止し、必要なファイルは社内で保管 |
| 共有先や目的が不明 | 上長が確認するまで判断保留とし、引継ぎ表に記録 |
| 有効期限やパスワードなどを設定していた | 共有方法に応じて設定内容を確認し、後任者が管理を継続できるよう引継ぎ表に記録 |
共有を停止すると、相手先がファイルを開けなくなります。停止する前に、相手先との取引状況を担当部署に確認しておくと、問い合わせの発生を抑えられます。
引継ぎの承認
棚卸し・所有者・共有リンクの整理内容がまとまったら、引継ぎ表として整理し、承認を得てから移管を実施します。
承認の流れ
- 退職者本人が引継ぎ表を作成する
- 後任者が内容を確認し、不明点を本人に質問する
- 上長が、移管先・削除対象・共有停止の判断を承認する
- 情報システム部門が、承認済みの内容に沿って権限変更や移管を実施または支援する
- 人事総務が、退職手続きの一環として引継ぎ完了を記録する
削除や共有停止は元に戻せない場合があるため、作業を実施する人と承認する人を分けることをおすすめします。
完了チェック
移管を実施したら、引継ぎ表に沿って結果を確認します。「作業した」ではなく「後任者が使える」ことを完了の基準にします。
- 後任者が、引継ぎ表の「継続利用」のファイルを開き、必要な操作ができる
- 部署の共有フォルダに移したファイルを、関係メンバーが参照できる
- 共有を継続するリンクについて、相手先から問題なく閲覧できることを確認した
- 共有を停止したリンクについて、停止したことを引継ぎ表に記録した
- 削除したファイルについて、承認者と実施日を記録した
- 判断保留の項目が残っていない、または暫定の所有者と期限が決まっている
- 引継ぎ表を、後から参照できる場所に保管した
退職者のアカウント停止時期は、情報セキュリティ上の要件とデータ引継ぎの進捗を踏まえて決定します。アカウント停止後も管理者が必要なファイルを確認・移管できるか、事前に利用中のサービスの仕様を確認してください。退職後も本人のアクセス権限が残ることのないよう、引継ぎ作業とアカウント停止の実施時期を調整します。
確認したい運用機能
退職時のデータ引継ぎをクラウドストレージ上で進める場合、製品選定や運用見直しでは次の観点を確認します。
| 確認する観点 | 引継ぎ作業との関係 |
| ファイル管理 | 個人フォルダと共有フォルダの使い分け、管理者による一覧確認ができるか |
| 共有権限 | 所有者・アクセス権の変更方法と、変更時に既存権限がどう扱われるか |
| 共有リンク管理 | 発行済みリンクの確認・停止、有効期限などの設定が可能か |
| 文書管理・版管理 | 移管後も更新履歴や過去の版を参照できるか |
| 操作の記録 | 誰がいつ移管・削除したかを後から確認できるか |
Fleekdriveは、ファイルやフォルダごとのアクセス権限設定、ユーザ・フォルダごとの権限一覧表示、ファイルのバージョン管理などに対応した法人向けオンラインストレージです。
退職時のデータ引継ぎでは、これらの機能を活用し、後任者が必要なファイルにアクセスできるよう権限を整理したり、ファイルの過去のバージョンを確認したりできます。実際の運用にあたっては、利用プランや設定条件、ファイル移管時の挙動を確認してください。
よくある質問
退職者の共有ファイルはどう引き継ぐ?
退職日より前に、退職者が所有・管理するファイルと共有リンクを棚卸しし、ファイルごとに新しい所有者または移管先を決めます。そのうえで社外共有の継続・停止を判断し、上長の承認を得てから移管します。最後に後任者がファイルを開けることを確認し、引継ぎ表に記録します。
後任者が決まっていない場合はどうすればよいですか?
いったん上長を暫定の所有者にするか、部署の共有フォルダへ移して管理します。後任者の着任後に再度移管する予定と期限を、引継ぎ表に記録しておきます。
退職者アカウントを停止すればファイルも引き継がれますか?
アカウントの処理とデータの扱いの関係は、利用しているサービスや設定によって異なります。アカウントの処理だけで引継ぎが済むと想定せず、データの引継ぎは本記事の手順で別途進めることをおすすめします。具体的な挙動は利用中のサービスの公式情報で確認してください。
社外と共有しているファイルはどう扱えばよいですか?
取引が継続する場合は後任者の管理に切り替え、相手先に担当変更を連絡します。案件が終了している場合は、契約内容や取引先との取り決めを確認したうえで、不要になった共有を停止します。判断がつかないものは上長が確認するまで保留とし、引継ぎ表に記録します。
引継ぎ完了後に確認すること
次のアクション
- 本記事で解説したデータ引継ぎの手順をもとに、管理対象のファイル名、現在の保存場所、移管先、共有リンクの扱い、承認者、完了確認結果など、引継ぎ表に記録する項目を決める
- 情報システム部門と人事総務で、退職手続きのどの時点で引継ぎ表を提出するかを決める
- 引継ぎ表の各項目について、利用中または導入を検討しているクラウドストレージで、ファイル管理・共有権限・共有リンク管理・版管理をどう運用できるかを確認する
退職者のデータ引継ぎを円滑に進めるには、ファイルの保存場所だけでなく、アクセス権限や共有状況を把握できる管理体制が欠かせません。
Fleekdriveでは、ユーザ・フォルダごとの権限一覧表示や、ファイル・フォルダ単位のアクセス権限設定に対応しています。退職・異動に伴うファイル管理の見直しを検討している場合は、Fleekdriveのユーザ・アクセス管理機能をご確認ください。
