金融業では、稟議書・決裁書類、契約書・約款・重要事項説明書、本人確認書類・取引記録、社内規程・事務手続マニュアルなど、判断や顧客対応の根拠となる業務ファイルを日常的に扱います。社内ファイルサーバーや文書管理システム、稟議・ワークフローシステムが整備される一方、過去のファイルの検索、最新版・改訂履歴の確認、顧客情報を含む資料の社外共有、稟議・決裁の進捗確認、規程や帳票の改訂連絡といった作業は、メールや電話、チャットなど、保存場所とは別の手段で発生しがちです。なお、金融業では法令対応やBCP、顧客対応の観点から紙の帳票・書類を併用する合理的な理由があるため、本調査は紙の利用自体ではなく、電子ファイル業務のなかに残る負担を対象としています。

目に見えにくい負担は、探す時間や決裁待ち、古い規程・帳票を使った手戻り、顧客への回答の遅れとして、日常業務のなかに積み上がっていきます。当社が先に公表した「ファイル管理と業務効率化の実態調査」(2026年4月)では、ファイル管理ツールの選定軸が「価格・容量」から「自動化・定着性」へ移りつつある実態を、「IT・情報通信業における文書管理実態調査」(2026年7月)では、選定基準が「情報の一元管理」「検索性」「バージョン管理」に集約される構造を示してきました。

そこで株式会社Fleekdriveは、金融業に焦点をあて、業務ファイルの保管・共有の実態と、保存後に発生する「隠れた業務負担」を把握するとともに、検索・共有や保存後の作業に費やす時間、顧客対応や監査対応への影響、金融業がファイル管理サービスに求める条件を明らかにするため、本調査を実施しました。

Contents

調査サマリー

  • 金融業の46.1%が「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」、38.2%が「最新版や改訂履歴がわかりにくい」と回答。直近1年間では28.4%が「稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた」経験
  • 37.3%が、ファイル保存・更新後の「稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡」を保存場所とは別の手段で実施。ファイルの検索・共有や保存後の連絡などに「週1時間以上」を費やす人は47.1%
  • ファイル管理サービスの選定基準、第1位は「過去のファイルを素早く探し出せること」(42.2%)。「導入・運用にかかる費用」は15.7%にとどまり、価格より「検索性」「最新版・改訂履歴」「セキュリティ」を重視

調査概要

  • 調査名称:金融業のファイル管理における「隠れた業務負担」の実態調査
  • 調査方法:IDEATECHが提供するリサーチマーケティング「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
  • 調査期間:2026年8月24日〜2026年8月25日
  • 有効回答:従業員数100名以上の金融業(保険業を除く)に勤務する正社員で、直近1ヶ月以内に、社内外の複数人が扱う業務ファイルについて、作成・保存・更新・送付・配布・共有設定・承認依頼・承認・整理のいずれかを自ら行った102名
    ※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。

金融業のファイル管理における「隠れた業務負担」の実態調査

金融業で日常的に扱う電子ファイル、「稟議書・決裁書類」が53.9%で最多。「契約書・約款・重要事項説明書」44.1%、「社内規程・事務手続マニュアル・研修資料」41.2%が続く

「Q1. あなたが、業務で日常的に扱っている電子ファイルの種類を教えてください。(複数回答)」(n=102)

「稟議書・決裁書類」が53.9%で最も多く、「契約書・約款・重要事項説明書」が44.1%、「社内規程・事務手続マニュアル・研修資料」が41.2%と続きました。本人確認書類・取引記録などの顧客書類も37.3%にのぼり、金融業では、意思決定、契約、顧客対応、規程運用に関わるファイルを日常的に扱う人が多いことがわかります。

  • 稟議書・決裁書類:53.9%
  • 契約書・約款・重要事項説明書:44.1%
  • 社内規程・事務手続マニュアル・研修資料:41.2%
  • 本人確認書類・取引記録などの顧客書類:37.3%
  • 顧客への提案資料・運用報告書:35.3%
  • 与信審査・投融資の判断資料:30.4%
  • 市場・企業の調査レポート:24.5%
  • 検査・監査への対応資料:20.6%
  • その他:0.0%
  • わからない/答えられない:10.8%

業務ファイルの保管・共有は「社内のファイルサーバー」67.6%が最多、「メール添付による送付」も48.0%。文書管理システム41.2%、稟議・ワークフローシステム36.3%が併存

「Q2. あなたが、業務ファイルの保管・共有・受け渡しに使用している場所や手段を教えてください。(複数回答)」(n=102)

「社内のファイルサーバー」が67.6%で最も多く、「メール添付による送付」が48.0%、「文書管理システム」が41.2%、「稟議・ワークフローシステム」が36.3%と続きました。個人のパソコンやUSBなどの外部メディアの利用も22.5%にのぼりました。紙での保管・回覧(19.6%)は、法令対応やBCP、顧客対応の観点から併用されている面もあると考えられ、電子・紙をあわせて保管、承認、受け渡しの経路が複数に分かれている実態がうかがえます。

  • 社内のファイルサーバー:67.6%
  • メール添付による送付:48.0%
  • 文書管理システム:41.2%
  • 稟議・ワークフローシステム:36.3%
  • オンラインストレージ・クラウドストレージ:30.4%
  • 自分のパソコン内、USBなどの外部メディア:22.5%
  • 電子ファイルを印刷し、紙で保管・回覧:19.6%
  • チャットツールへの投稿・共有:17.6%
  • その他:0.0%
  • わからない/答えられない:4.9%

46.1%が「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」、38.2%が「最新版や改訂履歴がわかりにくい」と回答

「Q3. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、現在非効率だと感じていることを教えてください。(複数回答)」(n=102)

「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」が46.1%で最も多く、「業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい」が38.2%と続きました。「顧客情報を含む資料を社外と安全に共有しづらい」は28.4%、「外出先や訪問先から、必要な資料を確認しづらい」は25.5%にのぼり、「特に非効率は感じていない」は9.8%でした。

  • 過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる:46.1%
  • 業務ファイルの最新版や改訂履歴がわかりにくい:38.2%
  • 顧客情報を含む資料を社外と安全に共有しづらい:28.4%
  • 外出先や訪問先から、必要な資料を確認しづらい:25.5%
  • 稟議・決裁の依頼や変更内容の連絡に手間がかかる:22.5%
  • アクセス権限や操作履歴の管理に手間がかかる:15.7%
  • その他:0.0%
  • 特に非効率は感じていない:9.8%
  • わからない/答えられない:4.9%

37.3%が、ファイル保存・更新後の「稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡」を別手段で実施。保存場所だけでは完結しない“隠れた業務負担”

「Q4. あなたが、業務ファイルを保存・更新した後に発生する作業のうち、ファイルを保存した場所だけでは完結せず、別の手段を併用しているものを教えてください。(複数回答)」(n=102)

「稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡」が37.3%で最も多く、「上長や関係部署への稟議・決裁の依頼」と「規程・帳票の改訂や変更内容の連絡」がともに29.4%と続きました。ファイルを保存した後も、承認依頼、進捗確認、改訂連絡、配布、権限変更、転記などが別の手段で発生し、保管場所だけでは業務が終わらない状況がうかがえます。

  • 稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡:37.3%
  • 上長や関係部署への稟議・決裁の依頼:29.4%
  • 規程・帳票の改訂や変更内容の連絡:29.4%
  • 営業店・関係部署・社外への資料の送付・配布:21.6%
  • 共有設定やアクセス権限の設定・変更:17.6%
  • 顧客管理システム・管理表への転記:15.7%
  • その他:0.0%
  • 特に作業は発生していない:19.6%
  • わからない/答えられない:6.9%

ファイルの検索・共有や保存後の連絡などに「週1時間以上」を費やす人は47.1%

「Q5. あなたが、業務ファイルの検索・共有、保存・更新後の連絡・配布、権限設定や台帳への転記などに費やしている時間は、1週間あたり平均でどの程度ですか。」(n=102)

「30分以上1時間未満」が28.4%で最も多く、「1時間以上2時間未満」が26.5%と続きました。「1時間以上2時間未満」「2時間以上4時間未満」「4時間以上8時間未満」「8時間以上」を合わせると47.1%となり、約半数がファイルの検索・共有や保存後の作業に週1時間以上を費やしています。

  • 30分未満:12.7%
  • 30分以上1時間未満:28.4%
  • 1時間以上2時間未満:26.5%
  • 2時間以上4時間未満:10.8%
  • 4時間以上8時間未満:6.9%
  • 8時間以上:2.9%
  • わからない/答えられない:11.8%

最新版の規程・帳票・資料を相手が確認したか「把握できていない」は35.3%

「Q6. あなたは、社内外の関係者(営業店の担当者、関係部署、社外の取引先など)が、最新版の規程・帳票・資料を確認したかどうかを把握できていると思いますか。」(n=102)

「あまりそう思わない」が29.4%、「全くそう思わない」が5.9%となりました。両者を合わせると35.3%に達し、最新版を配布・共有した後も、相手が確認したかどうかを把握できていない人が3人に1人を超えています。ファイルを送った後に、確認状況の把握や再連絡が残っていることがわかります。

  • 非常にそう思う:6.9%
  • ややそう思う:40.2%
  • あまりそう思わない:29.4%
  • 全くそう思わない:5.9%
  • 資料・書類を配布・共有する機会はない:5.9%
  • わからない/答えられない:11.8%

直近1年間で「稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた」は28.4%、「必要な資料が見つからず、顧客対応が滞った」は26.5%

「Q7. あなたが、業務ファイルの取り扱いに関して、直近1年間に経験したことを教えてください。(複数回答)」(n=102)

「稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた」が28.4%で最も多く、「必要な資料が見つからず、顧客対応が滞った」が26.5%、「改訂前の規程・帳票で対応が進み、やり直しが発生」が23.5%と続きました。「検査・監査で求められた資料を集めるのに苦労した」は19.6%、「顧客情報を含む資料を意図しない相手に送信した」は16.7%で、ファイル管理の負担が顧客対応、手戻り、監査、情報管理に及んでいます。

  • 稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた:28.4%
  • 必要な資料が見つからず、顧客対応が滞った:26.5%
  • 改訂前の規程・帳票で対応が進み、やり直しが発生:23.5%
  • 検査・監査で求められた資料を集めるのに苦労した:19.6%
  • 顧客情報を含む資料を意図しない相手に送信した:16.7%
  • セキュリティ上の制約で、紙や郵送での対応が発生:8.8%
  • その他:0.0%
  • 特に経験していない:27.5%
  • わからない/答えられない:5.9%

金融業がファイル管理サービスに求める基準、第1位は「過去のファイルを素早く探し出せること」42.2%。「導入・運用にかかる費用」は15.7%

「Q8. あなたが、業務ファイルを扱う製品やサービスを選ぶとしたら、どのような条件を重視するか教えてください。(上位3つまで回答可)」(n=102)

「過去のファイルを素早く探し出せること」が42.2%で最も多く、「最新版と改訂履歴がすぐにわかること」が39.2%、「セキュリティ・情報漏えい対策」が35.3%、「承認・通知・配布を同じ環境で進められること」が28.4%と続きました。「導入・運用にかかる費用」は15.7%で、上位4項目を下回っています。金融業では、価格だけでなく、必要なファイルを探せること、最新版を確かめられること、安全に扱えること、承認や配布まで同じ環境で進められることが重視されています。

  • 過去のファイルを素早く探し出せること:42.2%
  • 最新版と改訂履歴がすぐにわかること:39.2%
  • セキュリティ・情報漏えい対策:35.3%
  • 承認・通知・配布を同じ環境で進められること:28.4%
  • 導入・運用にかかる費用:15.7%
  • 誰がいつ閲覧・操作したかの記録が残ること:15.7%
  • 大容量ファイルを社内外と安全に共有できること:8.8%
  • 自社の承認ルールや業務の進め方に合わせやすいこと:6.9%
  • その他:0.0%
  • 特にない:2.9%
  • わからない/答えられない:6.9%

「ファイルの共有がバラバラで統一しないといけない」「マニュアルを見なくても直感的に利用しやすい」などの声も

「Q9. Q8で「特にない」「わからない/答えられない」以外を回答した方にお聞きします。Q8で回答した以外に、業務ファイルを扱う製品やサービスを選ぶ際に重視する条件があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=92)

61件の回答を得ることができました。

<自由回答・一部抜粋>
  • ファイルの共有がバラバラで統一しないといけない
  • データが重くならない、動作が早い
  • マニュアルを見なくても直感的に利用しやすい
  • ファイルの詳細な更新記録が残されていること

まとめ

今回は、金融業に勤務する102名を対象に、ファイル管理における「隠れた業務負担」の実態を調査しました。

保管・共有は「社内のファイルサーバー」(67.6%)が最多で、メール添付(48.0%)、文書管理システム(41.2%)、稟議・ワークフローシステム(36.3%)が併存しています。非効率と感じることの第1位は「過去のファイルや資料を探すのに時間がかかる」(46.1%)、次いで「最新版や改訂履歴がわかりにくい」(38.2%)でした。保存・更新後も37.3%が「稟議・決裁の進み具合の把握や再連絡」を別の手段で行い、47.1%が検索・共有や保存後の連絡に週1時間以上を費やしています。直近1年間では28.4%が「稟議・決裁が滞り、顧客への回答が遅れた」と回答しました。選定基準の上位は検索性(42.2%)、最新版・改訂履歴(39.2%)、セキュリティ(35.3%)で、導入・運用費用(15.7%)を上回りました。

金融業のファイル管理では、機密情報を安全に保管することに加え、必要な資料をすぐ探し、最新版を確かめ、稟議・決裁・配布の状況まで追えるようにする必要があります。選定基準では、検索性42.2%、最新版と改訂履歴39.2%、セキュリティ35.3%が、費用15.7%を上回りました。保管・共有・承認を分けず、ファイル業務全体を同じ環境で進められるかが問われています。