企業活動は持続することに意義があります。地震や台風あるいはサイバー攻撃などあらゆるリスクを回避して、事業を継続しなければなりません。そのためには災害対策が求められます。クラウドストレージは、大切なデータ資産を守る点で災害対策に役立ちます。本記事では、さまざまな災害のケースとともに、クラウドストレージの活用について解説します。

地震大国、自然災害の多い日本

日本は地震大国と呼ばれています。国土交通省が作成した資料によると、2011年から2020年までに発生した全世界のマグニチュード6.0以上の地震1,443回のうち、17.9%を占める259回が日本で発生しています。島国であることから、津波の被害も深刻です。また、台風による自然災害の対策も求められます。さらに最近の異常気象から、災害対策への意識が高まっています。

参考
『河川データブック2023』II 一般指標/2-2-4世界のマグニチュード6以上の震源分布、国土交通省
https://www.mlit.go.jp/river/toukei_chousa/kasen_db/pdf/2023/2-2-4.pdf

クラウドストレージが災害対策に役立つ理由

企業の災害対策は、DR(ディザスタリカバリ)という用語で知られています。災害対策は、BCP(事業継続計画)の一環として企業が取り組むべき重要な課題と言えるでしょう。システムダウンによるリスクを回避し、データの消失を防ぐために、クラウドストレージが役に立ちます。災害対策にクラウドストレージが役立つ理由を3つの観点から整理します。

社外のデータセンターで運用、どこからでもアクセス可能

クラウドストレージは社外のデータセンターで運用されているため、地震などの災害で会社の建物に被害が出ても、データが失われることがありません。また、インターネット回線を使えば、オフィス以外の環境から接続できます。電車など交通網が使えずに自宅待機の状態にあっても、業務を続けられます。従業員の安全確保を優先した上で、社内の環境に依存せずに仕事を持続できることから、クラウドストレージは災害対策に有用です。

バックアップを自動化、迅速に復旧

クラウドストレージは、データバックアップを自動化できます。したがって、社内の担当者の管理負荷を軽減しながら災害に備えたデータ管理を実現し、災害時の復旧も迅速に進めることが可能です。災害はいつ起きるか分からないため、定期的にバックアップが必要ですが、データ管理には人件費やコストがかかります。クラウドストレージはコストを最低限に抑えて、災害に備えられることがメリットです。

高可用性のインフラで安定稼働

クラウドストレージのインフラは高可用性の基盤の上に構築され、施設を守る対策が行われています。たとえばAWSのデータセンターでは、水害などの被害に対して漏水検知デバイスによって自動ポンプを作動させて被害を防止します。停電時にも運用できるように、無停電電源装置や自家発電設備も設置しています。セキュリティに対する高度な機能を含めて、安定稼働のための対策を備えています。

【災害ケース別】地震対策とクラウドストレージ

ここからは災害事例を挙げながら、注意しなければならないこととクラウドストレージの活用について解説します。まず地震対策を取り上げます。2011年の東日本大震災では、中小企業のデータ喪失が深刻であり、食品加工工場や工務店では、水没によって顧客リストや設計データが利用できなくなりました。大槌町役場のサーバは津波に襲われて住民票データが使えなくなり、人々の生活に大きな影響を与えました。地震時には、次のような被害がIT環境にもたらされます。

  • 通信、ネットワークが使えなくなる
  • 建物の倒壊によりサーバなどが破壊される
  • 津波により機器が水没する
  • 電源などが供給できなくなる

クラウドストレージはデータを守る上でメリットがありますが、インターネットなど通信環境が使えなくなると利用できないデメリットにも注意が必要です。

【災害ケース別】豪雨・水害対策とクラウドストレージ

水没被害では、地震のほかに豪雨や台風による洪水も考えられます。海外の事例では、2012 年のハリケーン「サンディ」によって、米国ニューヨークのデータセンターで稼働停止になりました。停電により地下のバックアップ用の発電機が浸水で使えなくなり、サーバがダウンしました。日本では、2022年、台風15号の影響により静岡県のクリニックで床上浸水の被害があり、電子カルテが水没の被害を受けた事例があります。以下のような場合には、水没に関する注意が必要です。

  • 海や河川に近い場所に会社がある
  • 地下室にサーバを設置している
  • 排水ポンプのような設備を備えていない

クラウドストレージを運用するデータセンターでは水害対策が行われて、複数の場所に同一のデータを分散させて保存させることによりデータ消失を防ぎます。

【災害ケース別】落雷対策とクラウドストレージ

IT設備は電力によって稼働しているため、落雷の被害も考慮すべきです。雷の直撃を受けなくても、落雷時には瞬間的な異常電圧が流れ込みます。この状態を「雷サージ」と呼びます。雷サージには、100万ボルトに達する直撃雷のほか、建物周辺の落雷が配電線などを通して流れ込む誘導雷、地面や構造物からの落雷が逆流する逆流雷があります。事業の停止などを含むと被害総額は1,000万円以上になることがあり、異常気象により年々増加しています。雷サージへの対策は以下になります。

  • 避雷針以外に雷保護システムを導入する
  • UPS(無停電電源装置)を使う
  • クラウドストレージにデータをバックアップする

UPSがあれば停電時にも電力を供給して、突然のシャットダウンによるデータ消失を防ぐことができます。ただし、UPSは長時間の稼働ができません。クラウドストレージにデータをバックアップすることにより、停電時にも安心です。

【災害ケース別】サイバー攻撃対策とクラウドストレージ

自然災害以外では、サイバー攻撃の対策も重要です。以下のようなリスクに備えます。

フィッシングメール送信者を詐称するメールから偽のWebサイトなどに誘導して情報を盗む
ランサムウェアマルウェアの一種。システムへのアクセスを制限して、解除のための身代金を要求する
ゼロデイ攻撃セキュリティの脆弱性が発見されて対処方法が確立されるまでの期間を狙う
標的型攻撃特定の企業を狙ってウイルスの添付された電子メールを送信する
内部不正従業員が情報を流出させる。退職した社員などが嫌がらせに行うこともある

クラウドストレージはウイルスチェックのほか、ファイルの暗号化など高度なセキュリティ機能によって、サイバー攻撃から企業のデータを守ります。

データ復旧を踏まえた対策が必要

最後に災害対策で注意すべきことを簡単にまとめます。企業の防災においては、次のようなことが大切です。

  • ルールや組織体制を明確にする
  • 日頃から防災意識を高め、定期的な訓練を行う
  • 災害発生時には、従業員の安全確保を第一にする
  • 二次災害を発生させないようにする

水没したストレージに保存したデータを復旧させるには、専門の業者に依頼しなければなりません。しかし、復旧までに時間がかかり、復旧できないことがあります。重要なデータは、社内のストレージや記録メディアとともに、クラウドストレージにバックアップしておくことが大切です。

まとめ

地震に加えて、異常気象により台風や豪雨の脅威が高まりつつあります。グローバルに事業を展開する企業では、戦争やテロによるリスクも想定すべきです。「備えあれば憂いなし」と言われますが、さまざまな災害に直面しても事業を継続させる対策が求められます。企業データのバックアップには、クラウドストレージの有効活用が役に立ちます。災害対策のためのクラウドストレージを検討中であれば、Fleekdriveをおすすめします。