文書管理システムとファイルサーバの違い

電子文書を保管するために利用されている代表的な手段として、文書管理システムとファイルサーバがあります。どちらも文書を電子化することにより、ペーパーレス化やナレッジの共有を促し、必要な情報にアクセスするスピードを高めることでは同じ効果があります。ここでは、同じように見えて概念や機能が大きく異なる、文書管理システムとファイルサーバの違いを解説します。

文書管理システムとは

文書管理システムは、電子化した文書をただ保管するだけではなく、企業が文書を管理するのに必要な情報を付加して、利便性を高めたシステムです。以前は、自前のサーバにソフトウェアをセットアップする必要がありましたが、最近ではクラウドサービスも提供されています。どの文書管理システムにも、概ね次のような機能が備えられています。

登録機能

文書を管理しやすくするために、登録した日時やユーザー、キーワードなどのタグを付加してシステムに登録できます。システムによっては、文書の中身を読み取り、自動的にキーワードをつけてくれるものもあります。

検索機能

検索機能により、文書を探すことができます。タグなどの条件を指定し、対象の文書を絞り込むこともできます。

アクセス制御機能

セキュリティを保つために、個人や部署、役職などの単位で、文書にアクセスできる権限を設定することができます。付与することができる権限は、閲覧のみ、更新可能などがあります。また、誰がいつ参照したのか履歴を記録することもできますので、万が一情報が流出した場合に追跡したり、不正を抑止したりする効果があります。

バージョン管理機能

バージョン管理機能によって、文書に誰が、いつ、何を変更したのかを記録できます。変更の度に新しい文書が増えてしまうと、最新バージョンがどれかわかりづらくなりがちですが、常に最新の文書のみを見ることができ、必要に応じて以前のバージョンの書類を取り出すこともできます。

ファイルサーバとは

ファイルサーバは文書管理システムと異なり、単純に電子化されたファイルを保存するためのものです。文書管理システムよりも手軽で、安価に導入することができます。ファイルサーバについても、文書管理システム同様、さまざまなクラウドサービスが登場しています。

サーバでの文書管理の問題点

サーバでの文書管理は、手軽ではあるものの、検索はサーバが持つ簡易な機能に限定されてしまいます。そのため、必要な文書を探すのが困難な場合があります。近年では、公的に電子管理が認められていなかった文書についても、いわゆる「e-文書法」の要件に則っていれば、電子文書として管理することができるようになりました。

しかし、権限やアクセス履歴の管理が十分でなかったりすることから、操作ミスや保管期限の誤認識による消失なども含めた、セキュリティ事故のリスクが考えられます。特にアクセス権限については、運用を始めた当初は問題がなくても、管理する文書の増加に伴って、適切な権限を付与できなくなる場合や、部署の異動、人数の増減によって、権限が不適切なまま放置されてしまう可能性があります。

また、サーバでの運用の場合は、バージョン管理はできません。そのため、後から必要になったときのことを考えて、古いファイルを保存しておくことも多く、どのファイルが最新なのかわからなくなることが、往々にして起きやすくなります。この場合、不要なデータも大量に残り続けることになるため、ファイルサーバの容量がひっ迫してしまいがちです。

一方、文書管理システムでは、過去のバージョンの文書は圧縮したり別の場所に移動したりすることで最適化を図ることができますので、こうした問題は解決されるのです。

文書を適切に管理するなら、文書管理システムが便利

文書には契約書や税務書類など、法的なルールや社内の規定により、一定期間は確実に保管し、いつでも取り出せる状態にしておくことが求められるものも多く存在します。

また、秘匿性の高い情報も存在するため、適切に管理することが必要です。文書管理システムは、従来は導入するために時間も費用も必要でしたが、最近では専用のサーバを用意する必要もなく、クラウドサービスを選択することができるようになりました。クラウドサービスであれば、まずは少しずつ管理範囲やユーザーを拡張することができるので、イニシャルコストを抑えつつ、最適な利用方法やシステムを考えることができます。

近年では、自然災害やテロなどの危険にさらされることが多くなっています。文書を電子化することにより、紙の消失や流出といったリスクを避けることができますが、電子文書も万全ではありません。そこで、重要な文書については、定期的に複数箇所にバックアップをとることが推奨されます。
こうしたBCP(事業継続計画)についても、クラウドサービスを選択することで、もしもの場合に備えることができるのです。

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