ファイル管理に使えるツールの1つにバージョン管理システムがあります。バージョン管理システムはファイルの変更履歴を管理できるシステムで、ファイルの編集者や変更理由といった変更履歴に関わる情報を保存できます。さらに履歴からファイルを過去のバージョンに復元することも可能。誤ってファイルを上書き保存してしまったときでも冷静に対処できます。ここでは、導入すると便利なバージョン管理システムの概要について紹介します。

ファイル管理が可能なバージョン管理システムって何?

バージョン管理システムは、パソコン上で作成あるいは編集されるファイルの変更履歴を管理するためのシステムです。
ファイルの更新は上書き方式になっているため、更新を保存すると編集前のデータは上書きされて消えてしまいます。更新した内容に特に問題がない場合はよいのですが、間違って上書きしてしまった編集前のデータも確認したいということもあるはずです。また、共有ファイルでは複数人で同時に編集してしまった結果、競合が起きて一部のデータが消えてしまう可能性もあります。こうした不都合な事態の解消に役立つのがバージョン管理システムです。バージョン管理システムでは、ファイルの変更履歴がすべてリポジトリという場所に保存されます。リポジトリ内に記録された変更履歴から誰がファイルを編集したのか知ることができますし、変更履歴から最新版ではない状態のファイルを復元することも可能です。さらにファイルのバックアップを取る、最新状態のファイルを複数人で共有するといった作業を簡単に行なえます。
バージョン管理システムは特にソフトウェア開発のソースコード管理で使われることが多いシステムですが、一般のファイル管理においても役立ちます。

バージョン管理システムの導入率はどのくらい?

それでは実際にファイル管理にバージョン管理システムを導入している人はどれくらいいるのでしょうか。全国の男女を対象にアンケート調査を実施しました。

質問

会社でバージョン管理システムは導入していますか?

回答結果

している:31
していない:69

アンケート概要

調査地域:全国
調査対象:【職業】パート・アルバイト 個人事業主 公務員 正社員 派遣社員 経営者
調査期間:2017年07月06日~2017年07月13日
有効回答数:100サンプル

導入していない企業もまだまだ多い?

調査の結果、全回答者のうち「会社でバージョン管理システムを導入している」と答えた人は全体の約3割、残りの約7割は「導入していない」と答えています。まずは「バージョン管理システムを使っていない」と回答した皆さんの声を紹介します。

  • バージョン管理システムは導入されていないので(35歳/男性/正社員)
  • 特に必要性を感じていないから。(42歳/男性/個人事業主・フリーランス)

職場によっては、そもそも導入の必要性を感じないというケースもあるのかもしれません。一方、バージョン管理システム導入済みの会社で働いているみなさんはどうでしょうか。

  • バージョンがそろっていないと後で管理が大変になるので。(44歳/女性/パート・アルバイト)
  • 今は会社員ではないのですが、過去に働いていた会社ではバージョン管理をしていました。全てのファイルではありませんがセキュリティ担当部署より提示されたガイドラインに沿ったものは全てバージョン管理されていました。(50歳/男性/個人事業主・フリーランス)
  • 会社全体ではありませんが、プロジェクト単位で導入しています。(45歳/男性/正社員)

ファイル管理のしやすさといった理由からバージョン管理システムを積極的に活用している会社もあるようですね。
今回の調査結果からは、バージョン管理システムを未導入という企業が多数派ではあるものの、バージョン管理システムをすでにファイル管理業務に活かしている企業も少なくないことがうかがえます。

導入する意味はあるの?バージョン管理システムのメリット

バージョン管理システムを導入するためには専用のソフトウェアをインストールするなどそれなりの準備が必要です。しかし、ファイル管理におけるバージョン管理システムの導入には複数のメリットがあります。
1つ目はデグレード障害に対応できることです。デグレード障害とは簡単に言うと、ファイルやプログラムを手直しした際に、それによって新たな不具合が発生することをいいます。たとえば、ファイルをうっかり古い内容で上書きしてしまい更新内容が失われるといった事態がこれにあてはまります。バージョン管理システムを導入していると、履歴からファイルを復元できますので、万が一デグレード障害が起きても上書きされたファイルを更新前の状態に戻すことができます。
2つ目はファイル名の他に持ち主や目的といった付加情報を載せられることです。バージョン管理システムでは、ファイル名以外にファイルの作成者や更新内容のメモ・変更理由といった情報を付け足すことができます。誰がいつどんな変更を加えたのか分かるため、複数人でファイルを共有するときには特に便利です。
3つ目はデータ消失時のバックアップとして使えることです。誤ってリポジトリのファイルを消失してしまっても履歴から過去の状態のファイルを取得できます。

メジャーなバージョン管理システムは2種類!

バージョン管理システムは複数のシステムが存在します。なかでもメジャーなのがApache SubVersion とGitです。
Apache SubVersionは集中型のバージョン管理システムで、1つのリポジトリをメンバー全員で共有します。共有リポジトリ内のファイルに加えられた変更については、メンバー各個人のパソコンで行われたものであってもすべて履歴に反映されます。リポジトリが1つしかないため操作方法がシンプルなのが特徴です。変更に伴って振られるリビジョン番号も連番で記録されるため、変更履歴の管理もしやすくなっています。
一方、Apache SubVersion の後に登場したのがGitです。Gitは分散型のバージョン管理システムで、共有リポジトリに加え、メンバーの各個人のPC内にローカルリポジトリを作成します。ローカルリポジトリで行われた変更が共有リポジトリに自動的に反映されることはありません。共有リポジトリに更新内容を反映させたい場合は、別途「Push」という作業が必要になります。リポジトリが複数あるため操作がやや複雑ですが、共有リポジトリにローカルリポジトリの変更を任意で反映できるのは大きなメリットといえます。作業の途中のファイルをローカルリポジトリで管理して、完成版のみを共有リポジトリに反映させることができるからです。

履歴を残す管理システムだからもしもの時に役立つ!

バージョン管理システムはファイルの変更履歴の管理、およびファイルのバックアップに役立ちます。誰がどんな理由でファイルを変更したのかも簡単に調査できますし、変更履歴から最新版以外のデータを容易に復元することもできます。バージョン管理システムの導入は、デグレード障害やデータ消失といった非常事態から大切なデータを守ることにつながります。ファイル管理を考えるうえで重要なツールの1つと言えるでしょう。