製造業における品質管理や職場のQC運動に関わっていない人々にとって、特性要因図はあまりなじみのない存在かもしれません。しかし、この特性要因図、問題解決ツールとして、実はとても有能なものなのです。品質管理の分野に限らず、ビジネス一般の課題に応用することができます。ここでは特性要因図を作成する目的を紐解いていくことで、その魅力に迫ります。問題解決力を身に着けたいビジネスパーソンは必見です。

うまくいかない時… 原因究明をする必要はあると思う?

仕事がうまくいかないとき、どうしたらよいのか悩んでしまいますよね。ただ、よい結果が出ないという「結果」には、それなりの理由があることがほとんどです。ところで、何か課題を見つけたとき、原因を追求するという作業を重視している人はどれくらいいるのでしょうか。全国の男女を対象にアンケート調査を実施してみました。

【質問】
仕事で良い結果が出せなかった時、原因を追求する必要はあると思いますか?

【回答結果】
思う:138名
思わない:12名

調査地域:全国
調査対象:年齢不問・男女
調査期間:2017年02月24日~2017年03月01日
有効回答数:150サンプル

原因追及は大切と考える人は多い

何か問題があったとき、その原因を知ることは大切だと考える人がほとんどという結果になりました。

  • 原因を追究して、次に活かすことが大事だと思うから。(30代/男性)
  • 原因が分からないと、次に何も役に立たないからです。また同じことの繰り返しになってしまうと思うので。(20代/女性)
  • 次回に同じ轍を踏まない為にも原因を知って対策を施す必要があると思う。(40代/男性)
  • 結果を出すために仕事をしているので、それが上手くいかなければきちんと原因を追究して次につなげる必要があると思う。(30代/女性)

次につなげるために、原因解明が必要と感じる人が多いようです。一方、「思わない」という人の意見も一部紹介します。

  • 明らかにマイナスがある場合は考えますが、そうでなければ逆に次の仕事のことや改善策を考えます(30代/女性)

確かに追及してもどうにもならない原因があることは否定できません。しかし大概の場合、原因を追究することが改善点を見つけるのに役立つのも事実。実際そのように考えている人が大勢いることがわかる結果になりました。

なぜこんな結果になったのか?うまくいかない原因を探り出す

ある特定の結果には、必ずそれを招いた原因があるはずです。問題を解決し、さらに似たような過ちを繰り返さないようにするためにも、結果に対する原因を特定し、さらに原因と結果の間の因果関係をはっきりさせることが大切になってきます。その作業を行う上で、役に立つツールが特性要因図です。特性要因図はもともと品質管理の分野で使われていたツールで、原因と結果の間にある因果関係を視覚的に表すために使います。特性要因図では、結果のことを「特性」、原因のことを「要因」と呼びます。特性要因図を書くときは、特性に影響していると思われる要因を考えられる限り書き出していきます。さらに一つひとつの「要因」をどんどん分解し、検討を加えていくことで、その「要因」を引き起こしている「要因」まで把握することができます。個々の要因を深く考察することで、ただ表面上の問題点を並べるだけでは気が付かないような、隠れた問題点まで見つけ出すことができるのです。特性要因図を使うことで、ある結果の原因として考えられる可能性について漏れなく検討することができます。今現実に起きている問題から将来起きると困る問題に至るまで、あらゆる問題について原因を探り出すことができるのです。

「要因」を検証することで具体的な解決策が見えてくる

特性要因図では、大きな要因をいくつかピックアップし、さらにそれぞれの要因について細かく検討を加えていきます。ある結果に対する大きな要因を「大骨」としたら、「大骨」の要因として考えられる「小骨」について検討する、その次は「小骨」の要因として考えられる「孫骨」について検討するといった具合です。このようにそれぞれの要因を階層化しながら分析していくことで、最初は抽象的に思えた要因が、徐々に具体化していきます。そして最終的には、具体的な行動や事柄の形で要因が示される形になるのです。問題点が具体的なものであれば、その分具体的な対策を立てるのも容易になります。ここまで来たら、あとは考えられる対策を一つひとつ実行していくだけです。特性要因図を使うと、物事の因果関係が直感的に把握できますし、さらに抽象的な問題も具体化して考えることができるようになります。そのため頭で考えていることを、目に見える形で整理することができます。その結果、本当の問題がどこにあるかを見極め、それに対して効果のある解決策を考え出すことができるようになるのです。解決策を見出しやすいような形で問題点の発見が可能になるのが、特性要因図の強みといえます。

仕事のトラブル予防および問題の分析に!特性要因図を書く目的

特性要因図はもともと製造業の品質管理の現場で、不良品をなくすためのツールとして使われていました。しかし問題解決のツールとして優れていることから品質管理に限らず、あらゆる問題について応用が可能です。特性要因図の特徴は、特性と要因、あるいは要因と要因の間の因果関係に、客観的妥当性があれば、検討すべき選択肢に加えてしまってよいという点にあります。必ずしも、因果関係が実験などで証明されている必要がないのです。そのため、幅広い可能性について検討することができます。こうしたことから、特性要因図の目的は、要因として推測される事柄や行動を見つけ出すことにあるといえます。正しく問題の原因を推論するためのツールが、特性要因図なのです。推論が許されているということは、まだ起こっていない問題についても検討できるということをも意味します。したがって現実に抱えている課題を解決したいときだけでなく、将来起こりそうなトラブルについてあらかじめ予防策を講じたいときにも、特性要因図を書くことは有効です。特性要因図の手法を身につけることで、ビジネスパーソンとして生きていくうえで大切な、問題解決力やトラブルを未然に防ぐ力を養うことができます。

特性要因図を書くことで隠れた問題点が見えてくる

特性要因図は、物事の因果関係を整理し、本当の問題点がどこにあるかを見つけるためのツールです。ここで導き出された要因はあくまで推論に基づくものですので、別途具体的な解決策を通して検証していく必要があります。しかし、考えられそうな原因についてすべて検討できるというのは大きな強みです。推論が許されるため、現実に起きている問題への解決策だけでなく、いまだ起こっていない問題について予防策を考えるのにも使うことができるからです。