レガシーシステムをそのまま利用していると、トラブルの発生やパフォーマンスの低下など、さまざまな問題が発生します。保守運用のコストがかかるほか、最新の技術に対応できないため企業の競争力低下にもつながります。本記事では、レガシーシステムの問題を整理して、古いシステムからの脱却方法、クラウドストレージへのデータ移行の進め方を解説します。
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レガシーシステムとは?
レガシーシステムとは、メインフレームなどの老朽化したコンピューター、COBOLなど古い言語で構築されたシステムを指します。金融業界などで活用されてきましたが、古いシステムはもはや時代遅れであり、経営の足かせになりかねません。経済産業省では、2018年に『DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』で旧式のシステムを使い続けることに警鐘を鳴らしました。企業の競争力を高めるためには、レガシーシステムからの脱却が必要と言えるでしょう。
なぜ企業のシステムはレガシー化するのか?
企業のシステムがレガシー化する理由には、以下の3つがあります。
- 技術革新のスピードに追い付けない
- システムが複雑化して代替が不可能になった
- 特定のベンダーへの依存(ベンダーロックイン)
めまぐるしい技術革新によって、標準化されていたシステムは大きく変わります。また、データ管理のニーズが急増すると、応急処置として建て増しのように機能を追加してシステムが複雑化することもあります。一方、システムの構築と保守運用を特定のベンダーに任せてしまうと、最新の技術を使いたくてもベンダーの対応範囲によって限られます。また、システムの仕様や機能がブラックボックス化します。こうしてベンダーに縛られる状況がベンダーロックインであり、システムを刷新できなくなる大きな原因です。
レガシーシステムから脱却する方法
レガシーシステムから脱却する方法には、以下の3つの方法があります。
- レガシーモダナイゼーション
- レガシーマイグレーション
- クラウドサービス活用
それぞれの概要を解説します。
レガシーモダナイゼーション
モダナイゼーションは「近代化」を意味します。既存のシステム資産を活用しながら、最新のテクノロジーに適応させる刷新の方法です。コストを抑えるメリットがあり、どのように刷新するかによって次の3つの方法があります。
リプレイス | レガシーシステムを新たなシステムに置き換えて既存データを運用 |
リホスト | システムの開発言語は変えずに、異なった環境でシステムを再構築 |
リライト | システムの要件を変えずに、新しい開発言語で書き換える |
レガシーマイグレーション
マイグレーションは「移転」を意味する用語です。既存のシステムを、まったく新しい環境に完全に置き換えてしまうことをいいます。たとえばメインフレームのシステムをWindowsやLinuxなどオープンシステムのOSに移行する場合、クラウドのシステムに移行する場合などがあります。運用コストの削減、セキュリティ強化ができますが、移行のためのコストと時間が必要となります。
クラウドサービスの活用
SaaSなどのクラウドサービスは、モダナイゼーションとマイグレーションのどちらにも使えます。既存のシステムを使いながらストレージなどを部分的にクラウド化するほか、完全なクラウドシフトも可能です。クラウドのサービスはコスト削減のほか、柔軟に拡張できることにメリットがあります。
レガシーシステムのデータ移行、3つの課題
レガシーシステムの脱却では、データ移行が重要です。なぜなら企業活動においてデータは資産であり、データ活用が企業の競争力を高めるからです。しかし、レガシーシステムから脱却するには、次の3つの大きな課題を乗り越える必要があります。
新旧両方のシステムの理解者がいない
レガシーシステムのデータ移行では、古いシステムと新しいシステムの両方を理解している技術者が必要になります。また、レガシーシステムは独自のカスタマイズや機能追加により複雑化しているため、前任者だけが理解できる仕様として、ブラックボックス化していることが少なくありません。保守的な担当者の場合、移行プロジェクトに懐疑的で、うまく進展しないこともあります。技術だけでなく組織文化の影響に考慮が必要です。
データ構造の解明と移行のための時間やコストかかる
技術者不足というヒューマンリソースの問題に加えて、多くのレガシーシステムは、文書化された仕様書やマニュアルがない場合もあります。こうしたケースのデータ移行では、新旧のシステムのデータ構造を理解して紐づけなければならないため、膨大なデータ構造を解明する時間が必要になります。また、データ移行のためのプログラム開発、検証の工数が増加すれば、それらがすべてコスト増につながります。
基幹系システムなどの移行は、業務を止めることができない
企業活動は基幹系システムに依存していることから、システムを停止させると業務に大きな支障があります。したがって基幹系システムのデータ移行では、ダウンタイムを最小限に抑えながら慎重にデータを移行することが重要です。また、移行時のトラブルは業務に影響を与えかねません。バックアップや復旧のチェックなど、あらゆる側面から対策を講じておくことが必要になります。従業員の理解も求められます。
クラウドストレージへのデータ移行のメリット
データ移行には課題もありますが、DX推進を見据えると大きな意義があります。レガシーシステムからクラウドストレージへのデータ移行には、次の3つのメリットがあります。
- コスト削減と最適化
- スケーラビリティの向上
- セキュリティとコンプライアンスの強化
社内のオンプレミス環境では、物理的な設備のほかに人件費など固定費が発生します。クラウドストレージの従量課金制を利用することで、コスト削減に繋がる場合もあります。柔軟なスケールアップとダウンによって、業務を最適化できます。
クラウドストレージへのデータ移行の進め方とポイント
レガシーシステムからクラウドストレージへのデータ移行では、以下のような進め方とポイントがあります。
- 現状の把握と方針
- 移行計画および移行方法の策定
- クラウドストレージおよび移行ツールの選定
- テストと検証、セキュリティのチェック
- パフォーマンスの最適化
- 移行の実施と運用
綿密な計画を立て、十分なテストを行い、段階的に移行するとよいでしょう。移行にあたってはシステムのモニタリングのほか、現場の意見をヒアリングし、課題を解決しながらパフォーマンスの向上を目指すことが大切です。
まとめ
レガシーシステムを使い続けることは、システム障害やセキュリティの面からリスクがあります。攻めのDX推進のためにも、旧式のシステムからの脱却が必要です。モダナイゼーションやマイグレーションの一貫として、クラウドストレージへのデータ移行に着手してはいかがでしょうか。Fleekdriveは信頼性の高いAWSを基盤として、金融業界の導入実績のある強固なセキュリティを備えています。レガシーシステムから脱却をお考えの際には、ぜひご相談ください。