ISO 9001に基づいて文書を管理していると、「改訂したのに旧版が現場に残っている」「どの文書が承認済みの正式版なのか分かりにくい」「監査時に必要な記録をすぐ提示できない」といった課題が生じることがあります。文書量や改訂頻度が増えるほど、紙や共有フォルダだけでこうした状態を防ぐのは容易ではありません。
ISO 9001の「文書化した情報」をクラウドで管理する際は、文書の作成・更新時のルールに加え、承認、版管理、アクセス制御、保存・廃棄などの管理方法を明確にすることが重要です。本記事では、ISO 9001の要求事項を踏まえ、作成から承認、配布、改訂、廃止、記録保持までの実務フローを整理します。
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ISO 9001が「文書化した情報」に求めること
ISO 9001は品質マネジメントシステムに関する国際規格で、全世界で170カ国以上、100万以上の組織が利用しています。ISO 9001は、一貫した製品・サービスの提供と顧客満足の向上を実現するための品質マネジメントシステムの要求事項を定めています。
出典:日本品質保証機構(JQA)
そのうち、文書化した情報について定めているのが7.5項です。ISO 9001:2015の7.5項は、7.5.1「一般」、7.5.2「作成及び更新」、7.5.3「文書化した情報の管理」で構成されます。実務では、次のように整理すると要求事項との対応が明確になります。
出典:日本規格協会グループ
要求事項との対応表
| ISO 9001 7.5項 | 実務で整える内容 | 手作業で起きやすい問題 |
| 7.5.1 一般 | ISO 9001が要求する文書化した情報と、品質マネジメントシステムを有効に運用するために自社が必要と判断した文書化した情報を明確にする | 管理対象となる文書や記録の範囲が曖昧になる |
| 7.5.2 作成及び更新 | 文書名・日付・作成者などの識別情報、適切な形式・媒体を定め、内容の適切性・妥当性をレビュー・承認する | 文書を識別しにくい、承認前の文書と正式版を区別しにくい |
| 7.5.3 文書化した情報の管理 | 必要なときに利用できる状態と適切な保護を確保し、配布・アクセス・検索・利用、保管・保存、変更管理、保存期間・廃棄を管理する | 旧版が現場に残って誤って使用される、変更履歴を追えない、権限が不適切で無断変更や情報漏えいにつながる |
これらを実務レベルでどのように管理するかは、文書化した情報に関する監査でも重要な確認点になります。
文書化した情報の種別
ISO 9001:2015では、従来「文書」や「記録」と呼ばれていた情報を「文書化した情報」として扱います。実務上は、規程・手順書など、業務を行うために作成・更新しながら維持する情報と、検査結果や承認記録など、活動の結果や適合の証拠として保持する情報に分けて考えると整理しやすくなります。
両者では管理の目的が異なります。維持する情報では、正式版の識別や改訂・承認などの管理が重要です。一方、保持する情報では、必要な期間にわたって適切に保存し、必要なときに参照できる状態を保つことが重要になります。
また、自社が品質マネジメントシステムの計画・運用に必要と判断した外部起源の文書化した情報も管理対象です。たとえば、顧客仕様書、法令・規制に関する文書、外部規格などが該当する場合があります。クラウドで管理する場合は、対象となる外部文書を識別したうえで、改訂状況を確認する方法や管理責任者、必要な利用者への共有方法などを定めておくと運用しやすくなります。
作成・承認の実務フロー
- 文書を作成し、文書名、作成者、作成日、対象範囲など、自社で必要とする識別情報を明確にする
- 承認権限を持つ責任者を定め、承認前は必要な関係者だけが参照・編集できる状態にする
- 承認後、自社ルールに従って版番号や改訂日などを付与し、正式版として識別できる状態にする
- 承認者・承認日など、必要な承認記録を残す
承認前の文書と承認後の正式版が混在すると、現場が誤った内容で作業してしまうリスクがあります。作成・更新時にレビューと承認を行い、利用者が正式版を識別できる状態を保つことが重要です。
配布と権限管理
配布段階では、誰が文書を閲覧・編集できるかを明確にすることが重要です。承認前の文書は作成者やレビュー担当者など必要な関係者にのみ閲覧・編集を許可し、承認後の正式版は利用者には閲覧権限を中心に付与しつつ、変更できる担当者を限定するといった運用が考えられます。
クラウドで管理する場合も、単にファイルを共有するのではなく、役割や業務に応じて閲覧・編集できる範囲を定め、正式版が意図せず変更されない状態を保つことが重要です。
改訂のフロー
- 改訂の必要性を確認し、改訂案を作成する
- 承認権限者が改訂内容をレビューし、承認する
- 自社ルールに従って新しい版番号や改訂日などを付与し、正式版を更新する
- 旧版は通常の参照場所から外すか、「旧版」「廃止」などと明確に識別して現行版と区別する
- 改訂履歴として、誰が・いつ・何を変更したかを追跡できる状態にする
改訂のたびにこの流れを徹底しないと、旧版が現場のフォルダやメールに残り続け、誤って参照されるリスクが生じます。変更を適切に管理し、現行版と旧版を識別できる状態を維持することが、監査対応の安定にもつながります。
廃止文書の扱い
廃止が決まった文書は、現行版と混同されて誤って使用されない状態に管理することが重要です。通常の参照場所から外すほか、法令・契約・自社ルールなどにより保存が必要な場合は、「廃止」「旧版」などと明確に識別し、現行版と区別して保管します。
あわせて、廃止日や管理責任者など、自社で必要と定めた情報を記録しておくと追跡しやすくなります。旧版や廃止版についても、必要な保存期間と廃棄方法を定めて管理します。
記録の保持
記録は、活動が実施されたことや結果が得られたことを示す証跡として使用されます。必要な記録について、法令・契約・顧客要求・事業上の必要性・自社規程などを踏まえて保存期間を定め、その期間中は適切に保護し、必要なときに検索・参照できる状態を維持することが重要です。
保存期間が終了した後の廃棄についても、対象、判断者、廃棄方法などをルール化しておくと、一貫した管理につながります。
クラウド化で変わること
紙やExcelでの文書管理は、文書量や改訂頻度が増えるほど、最新版の所在確認や承認状況の把握に手間がかかります。クラウドで文書を一元管理すると、文書の保管場所を集約し、アクセス権限やバージョン、承認状況などを管理しやすくなります。
ただし、クラウド化するだけでISO 9001の文書管理要求を満たせるわけではありません。対象文書、承認者、アクセス権限、保存期間、旧版の扱いなどの運用ルールを先に整理し、そのルールをシステム上の設定に反映することが重要です。
Fleekdriveを活用した文書管理のクラウド化
Fleekdriveには、自動バージョン管理、アクセス権限管理、操作証跡、IPアドレス制限など、文書管理の統制に活用できる機能があります。また、Business/Business plusでは、権限のカスタマイズ、ファイルのライフサイクル管理、ファイル配信の上長承認、自動ワークフローなども標準機能として利用できます。
たとえば、アクセス権限によって文書を閲覧・変更できるユーザーを限定したり、自動ワークフローを使ってファイルの承認プロセスを設定したりすることが可能です。自社で定めた文書管理ルールに合わせてこれらの機能を活用することで、正式版の管理や承認状況の把握、操作履歴の確認などをシステム上で行いやすくなります。なお、利用できる機能は契約プランやオプションによって異なるため、導入時には必要な機能と契約内容を確認してください。
ISO文書管理の自己点検リスト
- 現場が参照している版が、承認済みの正式版として識別できる状態になっているか
- 承認前の文書は、作成者やレビュー担当者など必要な関係者だけが参照・編集できる状態になっているか
- 改訂のたびに、誰が・いつ・何を変更したかを追跡できるか
- 廃止・旧版文書が現行版と明確に区別され、意図しない使用を防げる状態になっているか
- 文書化した情報が、不適切な利用・改変・消失などから保護されているか
- 品質マネジメントシステムの運用に必要な外部起源文書が識別され、適切に管理されているか
- 記録の保存期間が文書の種類や法令・契約・自社ルールなどに応じて定められ、必要な期間は検索・参照できるか
これらはISO 9001の文書管理を点検する際の主要な確認項目です。実際の適合性を確認する際は、自社が定めた文書管理ルールを含め、7.5項の要求事項に沿って運用されているかを確認します。
よくある質問(FAQ)
Q. ISO 9001の「文書化した情報」とは何ですか?
品質マネジメントシステムの運用に必要な情報と、その媒体を含む概念です。実務上は、規程・手順書など維持・更新して使用する文書と、活動結果の証拠として保持する記録の両方が含まれます。ISO 9001:2015では、これらを7.5項に従って管理します。
出典:日本規格協会グループ
Q. 文書管理は紙・Excel・システムのどれを選ぶべきですか?
ISO 9001は文書化した情報の媒体を特定の形式に限定していません。自社の文書量、改訂頻度、利用者数、承認やアクセス制御の必要性などを踏まえ、要求事項を継続的に満たせる管理方法を選ぶことが重要です。文書量や改訂頻度が増え、紙やExcelでの版管理・権限管理が難しくなってきた場合は、クラウドでの一元管理が選択肢になります。
Q. 監査で問題になりやすいのはどのような状態ですか?
現場で使用している文書が正式版として識別できない、旧版との区別がつかない、承認や変更の管理が不十分、必要な記録を提示できない、アクセスや保護のルールが運用されていないといった状態は、文書化した情報の管理状況を説明しにくくする要因になります。自社ルールと実際の運用が一致しているかを定期的に確認することが重要です。
Q. クラウド化すれば文書管理の課題はすべて解決しますか?
クラウド化自体は手段であり、それだけでISO 9001への適合が保証されるわけではありません。対象文書、承認者、権限設計、改訂方法、旧版の扱い、保存期間などのルールを整えたうえで、システムの機能を運用に組み込む必要があります。
まとめ
ISO 9001の文書管理は、書類を増やすことではなく、7.5項が求める文書化した情報の作成・更新・管理を、承認、識別、アクセス制御、変更管理、保存・廃棄などの運用ルールに落とし込み、実際の業務と結びつけることです。
最新版管理・承認・配布・改訂・廃止・記録保持のそれぞれで、誰がどの文書を管理し、どの版を正式版として利用するのかを明確にすることが、監査対応と日常業務の安定につながります。まずは自社の文書と記録を洗い出し、どこに正式版があり、誰が承認・更新の責任を持っているかを見える化するところから始めましょう。
