災害時にサーバなどの設備が破壊されても事業を継続できるように、日頃からのバックアップは大切です。防災担当者としてはBCP対策のために、データバックアップを理解しておく必要があります。本記事では、バックアップの基礎知識、データ分散、そして地理的に離れた場所にデータを保存する冗長性について解説します。
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防災にあたって必要なバックアップの基礎知識
IT関連には専門用語があり、一般的に使われている用語とは異なった意味を持つことがあります。防災やBCP対策の担当になって、戸惑うことが多いのではないでしょうか。まず次の3つのIT用語を取り上げます。
- SPOF(単一障害点)
- 多重化
- 冗長性
データのバックアップ関連の用語になりますが、用語を理解することによって、なぜバックアップが必要なのか理解が深まります。
「SPOF」を回避することが事業継続には必要
BCP対策では、システムのある部分が停止した場合に、すべてが止まってしまう状況を避けなければなりません。すべてを止めてしまう箇所のことをIT用語では(Single Point Of Failure、単一障害点)と呼びます。SPOFを回避するためには、サーバ、電源、通信ネットワーク、データなどを複数用意する必要があります。ただし、物理的に設備が集中していると、停電や建物の倒壊によって復旧が難しくなります。
バックアップの基本は「多重化」
データの予備を作ることがバックアップですが、基本的な考え方として「多重化」が重要です。多重化とは、複製(コピー)を2つ以上作ることをいいます。さらに、もとのデータとコピーを分散させて保管することが必要です。別の場所に分散させることで、データが失われるリスクを回避できるからです。たとえば同じPCの中にバックアップを保存しても、その端末が破壊されてしまうと、もとのデータとコピーが同時に使えなくなります。PCとは別の記録ディスクや社外のクラウドストレージに保存することで、データの消失を防ぎます。
「冗長性」はムダではない
IT関連では「冗長性」を重視します。冗長性は一般的に「ムダが多いこと」の意味になりますが、情報システムなどではムダが大切です。企業が扱うデータは、従業員が使っているパソコン、サーバ、ストレージなどに保存されています。災害時にはデータのバックアップはもちろん、バックアップから復旧して業務を継続することが求められます。そのためには予備の機器や環境が必要です。これが冗長性であり、バックアップはデータの多重化に役立ちますが、それだけでは冗長性を確保できたとはいえません。
地理的冗長性を踏まえた、さまざまな分散の方法
冗長性の確保には予備が必要ですが、地理的に離れた場所にバックアップや予備の環境を分散させることでリスクを回避できます。しかし、データを分散させるといっても、本店と支社、海外拠点などに分散させると情報共有や運用が困難です。このときクラウドストレージが役立ちます。ここでは次の3つのキーワードを解説します。
- ハイブリッドクラウド
- レプリケーション
- 秘密分散
データのバックアップを地理的に分散させて冗長性を確保し、災害に備えた環境を構築することが大切です。
「ハイブリッドクラウド」によるバックアップ
多重化と冗長性を確保する基本的な方法は、社内の端末やストレージと社外のクラウドストレージを利用することです。オンプレミスあるいはプライベートクラウドとパブリッククラウドのように複数の環境を組み合わせることを「ハイブリッドクラウド」と呼びます。外部の環境にデータを保存すれば、社屋が被災することがあっても、クラウド上のデータを使って業務を続けられます。また、記録メディアに保存したバックアップは持ち出しや破損の可能性がありますが、クラウド上のデータはセキュリティによって保護されます。
冗長性を確保する「レプリケーション」
クラウドストレージを含めてSaaS上に保管されたデータは、自動的に複数の場所に複製して多重化されます。このデータを複製する技術と機能が「レプリケーション(Replication)」です。クラウド上のデータはデータセンターの施設で保管されていますが、たとえば東京にある近隣のデータセンターの独立した複数のストレージに保管するほか、東京と大阪、あるいは海外など、遠隔地に分散させることで冗長性が高まります。
暗号化技術による「秘密分散」
セキュリティによるデータの保護では、暗号化が重要です。特別なカギを使わなければ情報を読み取れないように、暗号化によってデータを保護します。サイバー攻撃で情報を盗まれるようなアクシデントがあっても、カギがなければ情報を読めないことから情報漏洩の防止ができます。データ暗号化の技術のひとつとして、重要な情報を断片化して分散させる方法が「秘密分散」です。個人情報や研究開発の機密情報など、重要な情報のデータバックアップやファイル転送などの活用シーンで注目されています。
クラウドストレージを理解するための2つの基本用語
クラウドストレージに限りませんが、クラウドサービスの冗長性と可用性を考える上で、次の2つは押さえておきたい基本用語です。
- リージョン
- アベイラビリティゾーン
情報システム部門では馴染みの深い用語です。簡単に解説します。
「リージョン」はデータセンターの場所
リージョン(Region)は、地理的に離れているデータセンターの場所を指します。日本やアメリカのような国のリージョンとともに、日本国内の東京と大阪などのリージョンがあります。それぞれのリージョンにあるデータセンターは距離を隔て独立していることから、災害などのリスク回避ができます。国内の離れた複数のリージョンを使うことにより、データ転送の遅延を最小限に抑えた利用が可能です。
「アベイラビリティゾーン」は論理的なまとまり
アベイラビリティゾーン(Availability Zone)は「AZ」と訳されることもあり、特定のリージョン内において、ひとつ以上のデータセンターを論理的にまとめたものです。論理的とは「物理的」に対応するIT用語で「見かけ上」という意味です。それぞれのアベイラビリティゾーンは独立したネットワークや電源の供給などで構成されているため、ひとつのゾーンに障害が起きても別のゾーンを使って対応できます。同じリージョン内のアベイラビリティゾーンは、データ転送の遅延が抑えられます。
クラウドストレージの地理的冗長性とリスク回避
クラウドストレージは、地理的に離れた場所(リージョン)で、それぞれ独立した複数の環境(アベイラビリティゾーン)に自動的にデータをバックアップして耐障害性や可用性を高めます。信頼できるクラウドストレージサービスを使えば、コストを最適化した上で安全性を確保したBCP対策ができます。重要なデータ資産を守るために、あらためて利用しているクラウドストレージの仕組みについて理解し、防災対策のひとつとしてデータバックアップを拡充させましょう。
まとめ
企業の防災担当者が準備すべき対策は、広範囲に渡ります。したがって、社内の別部署や社外のサービスと連携して進めることが必要です。IT用語の基本を理解しつつ、データバックアップに関しては、外部のサービスの利用をおすすめします。Fleekdriveは、金融業界の導入実績もあるクラウドストレージですので、ぜひご検討ください。