契約書や経理データなど、改ざんされては困る重要ファイル。こうした情報をデジタルで管理する時代において、「原本性の担保」や「証跡管理」は避けて通れない課題です。本記事では、ファイル改ざんを防ぐための仕組みや、バージョン管理・ログ・電子帳簿保存法に対応した管理方法について解説します。
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なぜ“ファイル改ざん”が問題になるのか?
ファイル改ざんとは、本来の内容が不正に書き換えられる、あるいは意図しない形で修正されることを指します。契約書や請求書、社内の稟議文書などにおいて、改ざんは信頼を失うだけでなく、企業としての法的リスクにも直結します。
特にWordやExcel、PDFなど、編集可能なデジタルファイルでは、誰でも容易に中身を変更できてしまうため、見た目では改ざんの有無が分かりません。「本当にその時点でこの内容だったのか?」という証明ができなければ、証拠能力に疑問が生じるのです。
原本管理と証跡が求められる理由
ファイルの信頼性を担保するには、「いつ」「誰が」「どのように扱ったか」という証跡(トレーサビリティ)が必要です。また、電子データであっても“原本”として認められるには、次のような要件が求められます。
- 作成・編集履歴の記録が残っていること
- 意図しない改ざんができない環境で管理されていること
- 第三者が確認可能な状態で保存されていること
これらを満たさなければ、デジタルファイルが本物として機能しない可能性もあるため、原本管理の意識は今後ますます重要になります。
ログと証跡管理で改ざんを抑止する
ファイル改ざんを防ぐうえで最も効果的なのが、「ログ」の取得と可視化です。誰がいつファイルにアクセスし、どのような操作をしたかが記録として残っていれば、不正の抑止力になります。
- 閲覧履歴、編集履歴、ダウンロード履歴の自動取得
- 操作内容のアラート通知
- 外部アクセスの監視
これらの機能を活用することで、ファイルを取り扱うプロセスそのものが“見える化”され、透明性の高い情報管理が可能になります。
バージョン管理で“何が変わったか”を明確に
ファイルは更新されるもの──そうであるなら、「どこがどう変わったか」を記録として残すことが不可欠です。そこで活用したいのがバージョン管理機能です。
- 旧バージョンに戻せる
- 差分の比較が可能
- 誰がどの部分を修正したかが分かる
これらの機能により、たとえば「元の文章はこうだった」「〇〇さんが修正した部分が間違っていた」といったやりとりもスムーズに行えます。メール添付などによる“最新版混乱”のリスクも回避できます。
電子帳簿保存法への対応と実務のポイント
2022年の法改正により、電子帳簿保存法への対応が中小企業にも求められるようになりました。請求書や領収書、契約書といったファイルを電子データで保存する場合には、以下のような対応が必要です:
- タイムスタンプの付与
- 改ざん防止のためのシステム制御
- 検索機能の確保(取引年月日・金額など)
- 関連ファイルとの紐づけ
クラウド型のストレージや電子帳簿対応サービスを活用すれば、これらの対応を簡便かつ確実に行うことができます。
まとめ:改ざんされない“信頼できる”ファイル管理のために
紙からデジタルへと移行が進む中で、データの信頼性をいかに担保するかは企業にとっての重要課題です。改ざんされない原本性を保ち、証跡をきちんと記録し、法令にも対応したファイル管理の仕組みを構築することが求められます。
バージョン管理やアクセスログ、電子帳簿保存法への対応といったポイントを押さえることで、日々の業務を安全かつ効率的に進めることが可能になります。今こそ、自社のファイル管理体制を見直すタイミングではないでしょうか。